The Sake Wire

大学の米でビール、粕は牛へ 東北大学の循環型コラボ

東北大学と利久が、大学農場の米を使ったコールドIPAを発売し、醸造で出たビール粕を大学の牛の飼料に回す資源循環を始めた。

グラスに注がれた、すっきりとした琥珀色のクラフトビール
グラスに注がれた、すっきりとした琥珀色のクラフトビール — 写真: Josh Olalde(Unsplash)

日本の北東部・宮城県にある東北大学の大学院農学研究科と、東北地方を中心に飲食店を展開する株式会社利久の「希望の丘醸造所」が、共同開発ビールの第4弾「Kawatabi Cold IPA」を2026年9月11日に発売した。今回新しいのは、ビールそのものよりも、その後ろにある仕組みだ。醸造で出たビール粕を大学で飼っている牛のえさにして、その牛肉を利久の店で料理として出す。大学の農場から始まり、また大学の農場に戻ってくる資源循環である。

大学の田んぼから生まれたコールドIPA

収穫期を迎えた田んぼの稲穂
収穫期を迎えた田んぼの稲穂 — 写真: Chen Te(Pexels)

ビールには、農学研究科附属の川渡(かわたび)フィールドセンターで収穫した米「ひとめぼれ」が使われている。東北地方で広く作られている食用米の品種で、ここでは副原料として加えている。スタイルはコールドIPA。ふつうのIPAはエール酵母で造るが、コールドIPAはラガー酵母を使い、低い温度で長く熟成させる。そのため、すっきりとドライな飲み口になる。米からくる穏やかな甘みに、ホップの柑橘のような果実の香りが重なる。アルコール分は5.5%。利久の店舗のほか、仙台の藤崎百貨店や、宮城県内を中心とした一部の駅のコンビニ「NewDays」でも売られている。

ビール粕が牛のえさになり、料理になって戻ってくる

牛舎で飼料を食べる牛
牛舎で飼料を食べる牛 — 写真: Yan Krukau(Pexels)

ビールを仕込むと、麦芽から糖分を取り出した後の搾りかす(ビール粕)がたくさん残る。今年度から、これを川渡フィールドセンターで飼っている牛の飼料に使い始めた。育った牛は仙台牛として利久の店で商品になった。すき焼きを載せた重箱の定食、仙台味噌と赤ワインのソースで仕上げたステーキ、自社醸造ビールで煮込んだ料理、串焼き、牛肉を薄く押して焼いたせんべいの5品で、ビールと同時に発売された。売上の一部は東北大学基金に寄付され、大学の教育と研究に使われる。

串焼きのたれには日本酒の酒粕

炭火で焼かれる串焼き
炭火で焼かれる串焼き — 写真: Dennis Zhang(Unsplash)

日本酒ファンに注目してほしいのは串焼きだ。たれには、宮城県加美町の今野醸造の仙台味噌と、大崎市の酒蔵・宮寒梅の純米大吟醸の酒粕が使われている。酒粕は、日本酒を搾った後に残る白いペースト状のもの。純米大吟醸は、米の外側を半分以上削ってから醸す、日本酒の中でも上位の等級だ。ビールの粕は牛のえさに、酒の粕はたれに。副産物を捨てずに生かす考え方が、ビールにも日本酒にも共通している。

このビールと牛肉は日本国内でしか売られていないが、注目すべき点はヨーロッパでも試せる。コールドIPAはヨーロッパのクラフトブルワリーも造っているスタイルなので、米を副原料に使ったものがあれば、軽さとドライさを比べてみるのもよい。ビール粕を家畜の飼料にする方法はヨーロッパの醸造所でも昔から行われている。日本では、それを大学が研究と教育の場として見せているところが新しい。家庭でなら、日本酒の専門店で手に入る酒粕を味噌と混ぜ、肉や魚を漬けて焼けば、この串焼きに近い味わいを試せる。

参考・出典

本記事は上記の公開情報をもとに The Sake Wire 編集部が要約・執筆したものです。画像は自社素材を使用しています。

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