米価が2年で約2倍、日本酒の値上げはなぜ続くのか
日本の酒蔵115社への調査で、原料米の価格が一昨年の約2倍に上がり、約3割の蔵が値上げでコスト増を吸収しきれていない実態が明らかになった。

原料米の価格が「約2倍」に
新潟県立大学国際経済学部の佐藤淳氏が、学術誌「日本酒学ジャーナル」(2026年6月にオンライン公開)で論文を発表した。テーマは、2023年から2025年にかけて続いた日本酒の原料米の価格高騰だ。全国の酒造会社115社へのアンケートによると、原料米の価格は一昨年と比べて平均95.3%上がり、ほぼ2倍になっていた。日本酒は米、水、麹、酵母から造られるため、米の値上がりは生産コストに直接響く。論文は、この上昇を「異常」な水準だとしている。
値上げが追いつかない蔵
調査では、コスト増を製品価格に十分上乗せできていない「転嫁不足」の蔵が全体の約3割にのぼった。さらに各社の生産量で重み付けして計算すると、市場に出回る日本酒の量のおよそ半分が転嫁不足の状態にあると推計された。会社数で3割なのに量では5割ということは、比較的生産量の多い蔵ほど値上げが追いついていない可能性を示唆している。
安い酒ほど苦しい「値上げの罠」
日本酒には、原料や米の磨き具合(精米歩合)などの基準を満たす「特定名称酒」(純米酒や吟醸酒など)と、日常向けで低価格帯の「普通酒」がある。佐藤氏は過去の研究で推定された価格弾力性を使って試算した。その結果、普通酒などの低価格帯では、累計21.7%値上げすると販売数量が41.1%減り、売上総利益は元の売上高に対する比率で38.5ポイント下がるという。値上げしなければ赤字になり、値上げすれば客が離れる。論文はこれを「値上げの罠」と呼ぶ。そのうえで対策として、付加価値の高い商品へのシフト、国レベルでの統一的な支援、業界の取引慣行の近代化を挙げている。
この論文が分析しているのは日本国内の市場で、輸出価格への影響は直接扱っていない。それでも、ヨーロッパの店で日本酒の価格改定を見かけたら、その背景にはこうした米の値上がりがあるかもしれない。ボトルを選ぶときは、ラベルの「純米」「吟醸」といった区分や精米歩合を確かめ、価格と中身が見合っているかを比べてみたい。高付加価値の酒づくりが対策に挙がるなかで、各蔵がどんな新しい酒を出してくるのか、輸入業者の紹介や新商品の情報にも注目したい。
参考・出典
本記事は上記の公開情報をもとに The Sake Wire 編集部が要約・執筆したものです。画像は自社素材を使用しています。
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