The Sake Wire

佐渡の新銘柄「六識」、29歳蔵元が杜氏の勘をデータ化

新潟県・佐渡島の尾畑酒造が新銘柄「六識」を発売し、IT業界出身の6代目蔵元・和田航季さん(29)が杜氏の感覚を数値で捉えながら初めて醸造の責任者を務めた。

日本海に浮かぶ佐渡島は、新潟県の本州側の沖合にある島です。そこで日本酒を造る尾畑酒造が、新しい銘柄「六識(ろくしき)」を発売しました。造りを率いたのは、6代目蔵元の和田航季さん(29)です。和田さんにとって、仕込み全体の責任を負う「責任醸造」はこれが初めてでした。前職はIT系の広告代理店で、そこで身につけたデータ管理の手法を酒造りに持ち込みました。熟練の醸造責任者である杜氏が長年の経験と感覚で判断してきた部分を数値に置き換え、筋道を立てて理想の味を追いかけたといいます。

杜氏の「勘」を数字で受け継ぐ

日本酒造りでは、米の吸水、麹の育ち方、もろみの発酵の進み具合などを、杜氏が手触りや香り、経験から判断してきました。こうした技は言葉にしにくく、人から人へ受け継ぐのに長い時間がかかります。後継者不足が続く酒造業界では、これは多くの蔵が抱える課題です。和田さんは、その感覚をデータとして記録・管理することで、狙った味に再現性をもって近づこうとしました。伝統の技を否定するのではなく、数値という共通の言葉に置き換えて次の世代へ渡す試みと言えます。若い造り手が別の業界で得た経験を蔵に持ち帰る動きは日本各地で見られますが、この事例はその分かりやすい一例です。

辛口の看板酒とは違う方向へ

佐渡の稲田、黄金色に実った酒米
佐渡の稲田、黄金色に実った酒米 — 写真: Declan Sun(Unsplash)

尾畑酒造の看板銘柄「真野鶴(まのつる)」は、すっきりした辛口が中心です。六識はあえて方向を変え、透明感のある甘みと爽やかな酸味が調和する味わいを目指しました。和田さんが掲げたのは、理屈抜きで「おいしい」と心が満たされる酒です。酒米は佐渡で育った米にこだわりました。ラベルには角のない形を採用し、角の立たない丸い味わいを表しています。蔵はこの銘柄を若い世代にも届く酒と位置づけ、真野鶴と並ぶもう一つの柱に育てる考えです。なお「六識」は仏教で六つの感覚の働きを指す言葉としても知られています。

ヨーロッパでの楽しみ方

冷やした酒を注いだグラスとチーズの前菜
冷やした酒を注いだグラスとチーズの前菜 — 写真: Cup of Couple(Pexels)

六識がヨーロッパに入ってくるかどうかは、現時点では分かりません。それでも、この話から注目点は見えてきます。まず「真野鶴」を扱う専門店があれば、同じ蔵の辛口と甘酸っぱい新銘柄を飲み比べる機会を待つ価値があります。甘みと酸味のバランスを狙った酒は、冷やして白ワイン用のグラスで飲むと香りと酸の輪郭がつかみやすく、フレッシュなチーズや果物を使った前菜、酸味のあるソースの料理とも合わせやすいスタイルです。また、ラベルや輸入業者の説明で「若い蔵元が初めて手がけた」「地元の米を使った」といった背景に目を向けると、一本の酒が蔵の世代交代を映していることが分かり、選ぶ楽しみが広がります。

参考・出典

本記事は上記の公開情報をもとに The Sake Wire 編集部が要約・執筆したものです。画像は自社素材を使用しています。

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