日本初のRO認証酒蔵、仁井田本家が問う「働く人の幸せ」
創業1711年の福島の酒蔵・仁井田本家が、土壌と働く人の両方を審査する欧米発の認証を日本で初めて取得した。

福島県郡山市の酒蔵、仁井田本家(Niida Honke)は1711年の創業から300年以上続いています。この蔵の農業法人「仁井田本家あぐり」が2025年、アメリカ発の「リジェネラティブ・オーガニック認証(Regenerative Organic Certified、以下RO認証)」を日本の生産者として初めて取得しました。郡山は東京の北、東北地方の南部にある福島県のほぼ中央に位置します。2026年9月にはパタゴニア(Patagonia)が主催するメディアツアーが組まれ、蔵と田んぼが公開されました。
有機の先にある「再生」という考え方
リジェネラティブ(再生型)とは、環境への負荷を減らすだけで終わらず、土壌や生態系を前より豊かな状態に戻して次の世代へ渡そうとする考え方です。RO認証は有機認証を土台にしながら、「土壌の健康」「動物福祉」「社会的公平性」の3本の柱を立てています。一般的な有機認証で決まっているのは農薬や化学肥料、遺伝子組み換えの扱いが中心で、生産現場で働く人の待遇までは保証されません。RO認証はこの抜け落ちを埋めようとする仕組みで、公正な取引価格、生活賃金、児童労働や強制労働の禁止なども審査の対象になります。
審査で問われた「この会社で幸せか」
18代目当主で杜氏(酒造りの責任者)も務める仁井田穏彦さんの記憶に強く残ったのは、社員への聞き取りでした。話を聞く社員は会社ではなく審査する側が無作為に選び、給与や休暇といった制度面に加えて、この職場で幸せに暮らせているかという趣旨の質問までしたそうです。夏の草取りや真冬の早朝の仕込みなど、自然を相手にする仕事はきついものです。それでも仁井田本家は以前から社員の幸せを経営の目標にしてきたため、認証のために何かを変えることはなかったといいます。長く大切にしてきた姿勢を第三者に確かめてもらえたことを、当主はありがたく受け止めています。
「田んぼを守る酒蔵」とパタゴニアの酒

仁井田本家は「日本の田んぼを守る酒蔵になる」を掲げ、農薬や化学肥料に頼らない米づくりを続けてきました。この蔵が造るのが、パタゴニアの食品部門パタゴニア プロビジョンズ(Patagonia Provisions)のオリジナル日本酒「やまもり」で、日本で初めてRO認証を受けた日本酒です。2026年版は11月12日に発売される予定です。
ヨーロッパでは有機や環境配慮の認証を選ぶ目安にする人が多く、RO認証はそうした人にも伝わりやすい基準です。日本酒を買うときは、ラベルや輸入業者の説明でRO認証の有無を確かめてみてください。「やまもり」がお住まいの国で手に入るかどうかは、パタゴニア プロビジョンズや日本酒専門店に問い合わせるとよいでしょう。味だけでなく、どんな土で育った米を使い、どんな人が造ったのかに目を向けると、日本酒の見え方が変わるかもしれません。
参考・出典
本記事は上記の公開情報をもとに The Sake Wire 編集部が要約・執筆したものです。画像は自社素材を使用しています。
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