The Sake Wire

宇宙でウイスキー実験、グラスゴー大と九州工大

英国のグラスゴー大学と福岡の九州工業大学が、2028年に超小型衛星でウイスキーと樽材を宇宙へ送り、蒸溜と熟成を調べる。

熟成中のウイスキーと樽をイメージした写真
熟成中のウイスキーと樽をイメージした写真 — 写真: David Jdt(Unsplash)

スコットランドのグラスゴー大学と、福岡県にある九州工業大学(Kyushu Institute of Technology)が、ウイスキーを宇宙で蒸溜する実験を共同で進めています。計画名は「スペース・パフィン(Space Puffin)」です。2028年に「キューブサット」と呼ばれる手のひらほどの大きさの超小型衛星を打ち上げます。わずか10mlの液体を載せ、最長5年間、軌道上で変化を観測します。日本の専門メディアBARREL365が2026年10月9日に伝えました。

樽は載せず、樽材の小片で熟成を探る

熟成実験に使う樽材(オーク材)の木片のイメージ
熟成実験に使う樽材(オーク材)の木片のイメージ — 写真: Elevate(Unsplash)

衛星は国際宇宙ステーション(ISS)への補給船で運び、日本の実験棟「きぼう」から軌道に放出する予定です。載せるのはウイスキーの試料と原料、樽材の小片です。樽そのものは重くかさばるため、木片だけを使います。

調べることは主に二つあります。一つ目は、軌道上でエタノールを取り出せるかどうかです。エタノールは多くの医薬品づくりに使われます。二つ目は、樽材の反応です。衛星は地球を約90分で1周し、そのたびに急な高温と低温を繰り返します。研究チームは、木が地上よりずっと速く「呼吸」し、熟成を早める仕組みの手がかりになるかもしれないと考えています。

変化は、光で成分を読み取る人工の「舌」で計測します。香りの成分であるテルペンなどの小さな変化をとらえ、色や成分のデータを地上へ送ります。ウイスキーや樽材が宇宙へ行った例はこれまでにもありますが、いずれもISSの中の温度が管理された環境で、分析は地上に戻してからでした。ウイスキーを宇宙空間にじかにさらすのは、今回が初めてとされています。

なぜウイスキーなのか、そして竹鶴政孝とのつながり

銅製のポットスチル。発酵と蒸溜の化学が地上でよく知られていることが、宇宙実験の比較の基準になる
銅製のポットスチル。発酵と蒸溜の化学が地上でよく知られていることが、宇宙実験の比較の基準になる — 写真: Tiago Antonio(Pexels)

ウイスキーは、発酵と蒸溜の化学が地上で詳しく研究されています。そのため、微小重力の中で何が変わるかを比べやすい題材です。計画を率いるグラスゴー大学の研究者は、宇宙で発酵や化学反応をどう監視し、制御できるかを知りたいと話しています。背景には、宇宙で薬をつくる構想があります。微小重力では、より大きく純度の高い結晶ができると考えられています。地上で合成しにくい分子を軌道上でつくれれば、糖尿病、がん、アルツハイマー病の薬に役立つ可能性があります。今回の実験は、その前段階の基礎研究です。

役割は分かれています。九州工業大学は衛星本体と独自の観測装置を、グラスゴー大学はウイスキーの実験を担当します。グラスゴー大学で機械工学を学ぶ最終学年の学生7人が、今秋から3か月間九州工業大学に滞在し、電池や無線、搭載コンピューターの設計に加わります。渡航費は、蒸溜所の設計会社アレン・アソシエイツ(Allen Associates)が助成しています。学生の一人は、100年以上前に竹鶴政孝がグラスゴーで化学を学び、蒸溜の技術を日本へ持ち帰った歴史に触れました。竹鶴は日本のウイスキーづくりの礎を築いた人物で、学生はスコットランドと日本を再びつなぐ計画に加われることを喜んでいます。

ヨーロッパの読者にとって、これは買える商品の話ではなく、熟成の科学の話です。熟成の味わいの多くは樽から生まれます。ウイスキーや樽で寝かせた日本の酒では、木の香りや色の深さが熟成の手がかりになります。温度の上下が木と酒のやりとりを促すという考え方は、地上の貯蔵庫でも語られてきました。2028年以降に宇宙から届くデータが、その仕組みをどこまで説明できるのか。スコットランドと日本を結ぶこの研究の続報を待ちたいところです。

参考・出典

本記事は上記の公開情報をもとに The Sake Wire 編集部が要約・執筆したものです。画像は自社素材を使用しています。

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