月桂冠、酵母でスパイス香を変える実験酒「no.8」
京都の月桂冠が、陳皮や山椒を米のもろみと共に発酵させ、酵母の力でスパイスの香りを変えた限定酒「Gekkeikan Studio no.8」を10月5日に発売しました。

1637年に京都・伏見で創業した大手酒造会社、月桂冠(Gekkeikan)が、研究段階の酒を飲み手と共有するシリーズ「Gekkeikan Studio」の第8弾を発売しました。着想の源は、日本で正月に飲まれる伝統的な祝い酒「お屠蘇(おとそ)」です。本来は生薬を使いますが、月桂冠は身近なスパイスに置き換え、香りづくりを発酵に任せるという方法で現代的に組み立て直しました。
酵母がスパイスの香りを書き換える

開発のテーマは「バイオトランスフォーメーション」です。これは、酵母の働きによって香り成分が別の成分へと変化する現象を指します。仕込みの段階で、乾燥させたみかんの皮である陳皮と、柑橘のような香りを持つ日本の香辛料・山椒を、もろみ(米と麹と酵母が発酵している状態のもの)に加え、米と一緒に発酵させました。注目したのは、スパイス由来のゲラニオールや、柑橘を思わせるシトロネロール、華やかな果実香を持つ酢酸シトロネリルといった香り成分です。酵母だけでもスパイスだけでも生まれない香りを狙っています。
時間差で重ねるスパイスと、ドライな味わい

一方で、生姜・シナモン・クローブは本来の香りを生かすため、酒を搾る直前に加えました。発酵で変化した香りの上に、スパイスそのものの香りを重ねる造りです。仕上がりは軽やかでドライな味わいです。冷やすと柑橘と華やかな香りがまとまり、常温ではまろやかに、ぬる燗(40℃前後)では生姜や山椒のスパイス感が際立つといいます。スパイスを加えているため、日本の酒税法上は清酒(日本酒)ではなく「その他の醸造酒」に分類されます。アルコール度数は15度台で、720mL瓶1,000本の限定販売です。
試作を飲み手と共有する「Studio」
「Gekkeikan Studio」は、試作段階の酒を世に出し、飲み手の声を次の開発に反映させるプロジェクトです。no.8のラベルには漢字の「八」を分解して組み直した図案が使われており、伝統を再構築する実験性を表しています。
no.8の販売は日本国内の公式オンラインショップと京都の月桂冠大倉記念館に限られており、ヨーロッパで手に入れるのは難しいでしょう。それでも、大手の酒蔵が清酒の枠の外で香りの研究を商品にしている点は注目に値します。グリューワインに親しんだ読者なら、この発想にはなじみやすいかもしれません。月桂冠は、冷やす、常温、ぬる燗と温度を変えて楽しむ方法や、オレンジジュースや炭酸水で割る飲み方を提案しています。
参考・出典
- PR TIMES(月桂冠)「日本酒の未来をひらく実験的プロジェクト「Gekkeikan Studio」の新商品 スパイスをもろみと共に発酵させた、新しいお祝いの一「Gekkeikan Studio no.8」10月5日発売」
- SAKE Street「長く、広く、アメリカのSAKE市場を支える - フォルサム(アメリカ)・米国月桂冠」
本記事は上記の公開情報をもとに The Sake Wire 編集部が要約・執筆したものです。画像は自社素材を使用しています。
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