The Sake Wire

酵母も乳酸菌も北海道産、福司酒造「ToyTou」

釧路の福司酒造が、米と水に加えて酵母と乳酸菌まで北海道由来にした限定酒「ToyTou」を2026年10月8日に発売した。

福司酒造の五色彩雲から出た新作「ToyTou」(プレスリリースより)
福司酒造の五色彩雲から出た新作「ToyTou」(プレスリリースより) — 画像提供: PR TIMES(福司酒造)(プレスリリースより)

北海道東部の港町・釧路にある福司酒造(Fukutsukasa Shuzo)は1919年に創業した。造る日本酒の9割以上は地元の道東で飲まれている。この蔵が2026年10月8日、新作「ToyTou(トイトウ)」を発売した。使った原料は北海道産の酒米と釧路の水だけではない。発酵を担う酵母と乳酸菌も北海道で分離したものだ。蔵はこの酒で「北海道の酒とは何か」を問いかけている。

「北海道産」の先にある酒造り

福司酒造のプレスリリースで紹介された「五色彩雲 ToyTou」の造りの様子
福司酒造のプレスリリースで紹介された「五色彩雲 ToyTou」の造りの様子 — 画像提供: PR TIMES(福司酒造)(プレスリリースより)

ToyTouは、福司酒造が2023年に立ち上げたセカンドブランド「五色彩雲(Goshiki no Kumo)」から出た。このブランドは「100年先の地酒」を掲げ、釧路だけでなく北海道全体をひとつの産地として捉えている。北海道では酒米の品種改良が続き、地元の米を使った酒造りが広がってきた。気候が温暖化するなかで、本州から北海道へ蔵ごと移った例もある。福司酒造が目指すのは、北海道産の原料を使うことのさらに先だ。長い歴史を持つ本州の酒どころに対し、北海道にはこれから積み上げられるものがまだ多い、というのが蔵の考えである。

微生物まで自分たちで選ぶ

ToyTouの仕込みに関わる工程(福司酒造のプレスリリースより)
ToyTouの仕込みに関わる工程(福司酒造のプレスリリースより) — 画像提供: PR TIMES(福司酒造)(プレスリリースより)

日本酒は、まず「酒母(しゅぼ)」と呼ばれる酵母の培養液をつくり、それを大きなタンクで育てて醸す。伝統的な製法では、乳酸菌が酒母を酸性にして雑菌を抑え、そのあとに酵母が増えていく。蔵は自社の醪(もろみ。発酵中の酒)から約100株の乳酸菌を分離し、そこから2種類3株を選んだ。酵母は北海道の自然環境から分離したものを使う。酒米は北海道・新十津川町産の「吟風(ぎんぷう)」だ。乳酸菌をどのくらいの時間働かせ、その環境をどう酵母に引き継ぐか。蔵は、目指す香りや酸、旨味から逆算して酒母を設計した。蔵によれば、狙いは北海道由来の素材をそろえることではなく、それぞれの菌の個性を味わいとして表すことにある。

「土を問う」という名前

五色彩雲の新作「ToyTou」(福司酒造のプレスリリースより)
五色彩雲の新作「ToyTou」(福司酒造のプレスリリースより) — 画像提供: PR TIMES(福司酒造)(プレスリリースより)

「Toy」は、北海道の先住民族アイヌの言葉で「土」を意味する。蔵はこの名前に、米が育つ土だけでなく、気候や微生物、人の仕事、技術まで含めて酒の背景を見つめ直す「土を問う」という意味を込めた。裏ラベルのQRコードを読むと、吟風を育てる新十津川町の生産者を取材した記事を読める。720ml入り、アルコール分14%で、700本の限定生産だ。

700本限定で、ヨーロッパへの輸出予定も発表されていないため、ToyTouそのものを欧州で手に入れるのは難しいだろう。注目したいのは、北海道が米の産地から酒の産地へ育とうとしている流れのほうだ。欧州の日本酒専門店で北海道の蔵や「吟風」を使った酒を見かけたら、手に取ってみるのもよいだろう。ワインのテロワールに慣れた人なら、その土地の酵母や乳酸菌が生む酸と旨味に注目すると、北海道の酒のこれからが見えてくるかもしれない。

参考・出典

  • PR TIMES(福司酒造)
  • SAKE Street

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