シャンパン並みの泡を日本酒で 天山酒造の10年
佐賀県の天山酒造で杜氏を務める後藤潤さんが、シャンパン並みのガス圧をもつ瓶内二次発酵の日本酒を10年かけて完成させ、文部科学大臣表彰を受けた。

日本の文部科学大臣は毎年、職場の技術改善で成果を上げた人を「創意工夫功労者賞」で表彰している。2026年は、九州北西部の佐賀県小城市にある天山酒造の後藤潤さん(60)が受賞した。後藤さんは酒造りの現場を率いる責任者「杜氏(とうじ)」で、評価されたのはシャンパンに匹敵する炭酸ガスの量ときめ細かな泡をもつスパークリング日本酒の開発だ。
10年がかりで目指した「一年中売れる泡」
天山酒造は以前から、瓶の中で二度目の発酵をさせるスパークリング清酒を造っていた。瓶の底に沈んだ澱(おり、酵母などの沈殿物)が発酵を続けて炭酸ガスを生む仕組みだ。ただし加熱殺菌をしない「生酒」だったため、瓶の中で熟成が進んで風味が変わりやすく、売れる期間が限られていた。そこで後藤さんは七田謙介社長と日本酒の将来を話し合い、一年を通して販売でき、シャンパンのように祝いの席の乾杯で選ばれる、透明で泡の細かい酒を目指すことにした。
不快な香りとの格闘、そして工程の見直し

最初は、瓶の中で二次発酵を進めながら澱を取り除く作業を繰り返した。しかし、ガスの量が思うように増えない、好ましくない香りが出るといった問題が続いた。手探りの状態は5〜6年に及び、最終的に工程そのものを大きく組み直した。火入れ(加熱殺菌)のやり方や、複数のタンクの酒を混ぜる調合など細部を一つずつ変えて不快な香りを抑えた。その結果、長い期間の瓶内二次発酵を経ても風味がしっかり残る、辛口のスパークリング清酒が完成した。
海外へ、そしてヴィンテージへ
天山酒造はすでに酒を輸出している。後藤さんは、日本酒の可能性を海外の人にも知ってほしいと話し、ヴィンテージ(年号入りの酒)を含むさまざまな挑戦に意欲を見せる。
ヨーロッパでスパークリング日本酒を選ぶときは、まず「瓶内二次発酵(bottle-fermented)」と書かれているかを確かめたい。次に、澱を取り除いた透明なタイプか、澱が残る白く濁ったタイプかも見ておこう。天山酒造が目指したような透明で辛口のタイプは、シャンパンと同じようによく冷やし、フルートグラスか白ワイン用のグラスで、食前酒や乾杯に向いている。シャンパンと飲み比べて、泡の細かさや、米から生まれる穏やかなうま味の違いを感じてみるのもおもしろい。天山酒造の酒を扱っているかどうかは輸入元によって違うため、日本酒を扱う専門店で尋ねてみるとよい。
参考・出典
本記事は上記の公開情報をもとに The Sake Wire 編集部が要約・執筆したものです。画像は自社素材を使用しています。
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