The Sake Wire

酒粕の蒸留所が造る、二重抽出のコーヒーリキュール

酒粕を活かす男鹿の早苗饗蒸留所が地元ロースターと組み、浅煎り豆を蒸留して深煎り豆を漬け込むコーヒーリキュールを発売した。

早苗饗蒸留所とさとやまコーヒーが共同で造ったコーヒーリキュール
早苗饗蒸留所とさとやまコーヒーが共同で造ったコーヒーリキュール — 画像提供: SANABURI(PR TIMES)(プレスリリースより)

日本酒を搾った後に残る酒粕は、日本では昔から食材や焼酎の原料として使われてきました。秋田県の男鹿半島(本州北部の日本海側)にある早苗饗(さなぶり)蒸留所は、2025年1月に稼働を始めた新しい蒸留所です。酒粕など捨てられやすい素材から蒸留酒を造ることを目指しています。その新作が、コーヒーリキュール「SANABURI LIQUEUR コーヒー prototype06」です。

酒粕から始まった蒸留所

早苗饗蒸留所のコーヒーリキュール「prototype06」
早苗饗蒸留所のコーヒーリキュール「prototype06」 — 画像提供: SANABURI(PR TIMES)(プレスリリースより)

運営する株式会社SANABURIは、男鹿の醸造所「稲とアガベ」とその仲間たち約10人が設立した会社です。稲とアガベが造るのは「クラフトサケ」と呼ばれる酒で、日本酒の造りを基本にしながら、副原料を加えるなど自由な発想で仕込みます。昔の農家は酒蔵から酒粕を買って蒸留し、その酒を田植え後の祭り「早苗饗」で飲み、残りかすは畑の肥料にしていました。蒸留所はこの習慣を現代に再現しようとしています。ジンやリキュールなどを展開しており、今回の原材料にも粕取焼酎(酒粕を蒸留した焼酎)が使われています。

浅煎りは蒸留、深煎りは漬け込み

コーヒースピリッツに深煎り豆を漬け込んで造るリキュール
コーヒースピリッツに深煎り豆を漬け込んで造るリキュール — 画像提供: SANABURI(PR TIMES)(プレスリリースより)

組んだ相手は、開業時からのパートナーである男鹿のロースター「さとやまコーヒー」です。このリキュールの特徴は、同じ豆を2種類の焙煎度と2種類の抽出法で使い分けたことにあります。まず浅煎り豆を蒸留し、果実のような明るい香りだけを取り出したコーヒースピリッツを造ります。そこに深煎り豆を漬け込み、苦みとコクを溶かし込みます。豆は焙煎から2週間以内のものを使い、仕込みの当日に挽きます。甘さは控えめにしてあり、アルコール度数は25%です。蒸留家の鶴田一樹氏は、浅煎りの華やかさと深煎りのコクを一本に詰め込んだと話しています。

エチオピアの一農家の豆

使ったのは、エチオピア・シダマ地方テフェリ・ケラ産の単一農家の豆です。水洗式で精製された、雑味のないクリーンなコーヒーです。さとやまコーヒー代表の大西克直氏は自らエチオピアを訪れ、農家と直接取引をしています。森を残しながら作物を育てる「アグロフォレストリー」で栽培された豆も扱っています。大西氏は、コーヒーの風味がしっかり残りながら雑味がなく、飲みやすいことに驚いたと語っています。

販売先として案内されているのは蒸留所の公式オンラインショップで、ヨーロッパの店頭で見かける機会はまだ少なそうです。ただ、酒粕という日本酒造りの副産物から出発した蒸留所が、コーヒーのような異分野の素材と組み合わせて新しいスタイルを生んでいる流れは、注目に値します。手に入った場合は、まずはストレートで、果実のような香りと深いコクが重なる様子を確かめてみるのもよいでしょう。蒸留所は、ミルク割り(1対3)、コーラ割り、ビール割り、エスプレッソマティーニのベースとしての使い方を勧めています。ヨーロッパでおなじみのエスプレッソマティーニを、このリキュールで作り比べてみるのも楽しいでしょう。

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