新蔵・天郷醸造所、134年の老舗から清酒免許を承継
福岡の新しい蔵・天郷醸造所が、後継者のいない老舗・萬年亀酒造の清酒免許を引き継ぎ、10月1日に日本酒造りを始めた。

134年の免許が新しい蔵へ
日本では、国内向けの清酒製造免許を出すかどうかを、需要と供給の釣り合いを見て判断する仕組みがある。このため、新しい蔵が一から免許を取るのは難しい(輸出用などは別の扱いになる)。九州北部、福岡県福智町(ふくちまち)の天郷醸造所(あまのさとじょうぞうしょ)は、まず2025年9月に「その他の醸造酒」の免許を取って酒造りを始めた。米以外の副原料を使う醸造酒が入る区分で、法律上は「清酒(日本酒)」を名乗れない。同じ年の12月、後継者がおらず廃業の危機にあった久留米市の萬年亀酒造(まんねんがめしゅぞう、1892年創業)の全株式を取得。合併にともなう免許の移転が日本酒の日の10月1日に認められ、134年続いた蔵の清酒免許は福智町の新しい蔵へ引き継がれた。
合鴨農法の米と、雅楽が響く蔵
代表の中山雄介氏は、富士通、日本コカ・コーラ、アマゾンジャパン(酒類事業の責任者)、楽天を経て独立した。その後は各地の酒蔵のネット販売や経営、海外展開を支えてきた。故郷の福智町で使うのは、合鴨(あいがも)に田んぼの雑草を食べさせて育てる合鴨農法の米で、農薬も肥料も使わない山田錦やヒノヒカリだ。仕込み水は敷地内の井戸から汲む伏流水。発酵中のタンクには、日本の宮廷音楽である雅楽を流している。萬年亀酒造が培ってきた清酒造りの知識も取り入れ、日本酒とその他の醸造酒を一年を通して造る。
カンヌからミラノ、そして日本酒へ
国際的な場でも評価を受けている。ブランド「在る宵(あるよい)」の「天郷」は、2026年5月の第79回カンヌ国際映画祭で公式酒に選ばれた。9月にはミラノ酒チャレンジでベストデザイン賞を受けている。現在の銘柄は「天郷」「緒奏」「寒夜」「小暖」「陽香」の5つで、どれも「その他の醸造酒」に分類される。最初の清酒は10月に仕込み、11月後半に発売する予定で、詳細は11月1日に発表される。
ヨーロッパの読者が注目したい点は二つある。一つはラベルに書かれた分類だ。同じ蔵の酒でも、「清酒」と「その他の醸造酒」では原料の考え方が異なる。分類の違いに目を向けると、この蔵の発想の幅が見えてくるかもしれない。もう一つは、11月後半に出る最初の清酒。歴史ある蔵の技術を受け継いだ新しい蔵の第一作で、蔵は自分たちの酒を世界に届けたいと話している。日本では後継者がいないために消えていく蔵が多い。そうした中で、免許を引き継いで酒造りを続ける道があることも、日本酒の今を知る手がかりになる。
参考・出典
- PR TIMES(天郷醸造所)「天郷醸造所10月1日に清酒免許を承継」
参考・出典
本記事は上記の公開情報をもとに The Sake Wire 編集部が要約・執筆したものです。画像は自社素材を使用しています。
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