The Sake Wire

元プラントエンジニアの杜氏、天山酒造・後藤潤さんの歩み

佐賀県・天山酒造の杜氏、後藤潤さんは元プラントエンジニア。異色の経歴が酒造りと環境対策にどう生きているかを紹介する。

酒蔵(イメージ)
酒蔵(イメージ) — 写真: Celuici(wikimedia, CC BY-SA)

九州北西部の佐賀県小城市にある天山酒造で杜氏(とうじ。酒蔵で醸造の責任者を務める職人)を務める後藤潤さん(60)は、約30年前にエンジニアから酒造りの世界へ移りました。2026年9月7日、後藤さんは地元の岩松小学校で特別授業を行い、自身の歩みを振り返りながら「好き、おもしろい、やってみたいという気持ちが一番のエネルギーになる」と子どもたちに語りました。地元紙の佐賀新聞が伝えたこの授業からは、異業種出身の杜氏ならではの視点が見えてきます。

宇宙への憧れから、海外のプラント現場へ

工業プラントに張り巡らされた配管と塔
工業プラントに張り巡らされた配管と塔 — 写真: Policarpo Brito(Pexels)

後藤さんが技術の道を選んだきっかけは、子どもの頃に見たアニメで抱いた宇宙への憧れでした。工業系の大学を卒業した後、三重県の工業地帯(コンビナート)でプラントエンジニアとして働き、海外での勤務も経験しました。日本の外で暮らしたことで自国を見つめ直すようになり、歴史や日本酒への関心が深まっていったといいます。

29歳で酒蔵へ 棚田の酒米と世界の食卓

29歳のとき、後藤さんは経験のなかった酒造りに飛び込みました。「知りたいという思いは、宇宙に憧れた頃と同じだった」と本人は振り返ります。小城市に移り住んでからは、ホタルが舞う清流など土地の自然にも魅了されました。酒造りについては「知るほどに引き込まれる」と表現しています。授業では、世界各地の食文化に合わせられる日本酒づくりや、市内の江里山地区の棚田で酒米(日本酒用の米)を育てる活動など、伝統を守りながら地域に貢献する取り組みを紹介しました。

エンジニアの経験を温室効果ガス削減に

プラント工場・エンジニアの設備点検のイメージ
プラント工場・エンジニアの設備点検のイメージ — 写真: Kateryna Babaieva(Pexels)

近年、企業には温室効果ガスの削減が求められています。後藤さんによると、この分野ではプラント勤務時代に身につけた知識が役立っているそうです。「人生は、後から振り返ると一本の線でつながっている」という言葉からは、工学の知識と伝統的な醸造が一人の造り手の中で結びついていることがわかります。

ヨーロッパで日本酒を選ぶときは、裏ラベルや輸入元の説明に杜氏の名前や経歴が書かれていることがあります。佐賀の酒を見かけたら、誰がどんな背景で造っているのかに目を向けてみてください。棚田など、どこで育った米を使っているかも注目したい点です。蔵自身が世界の料理との相性を意識しているので、和食に限らず、普段の食卓の料理と合わせて試してみると、造り手の考えが伝わるかもしれません。

参考・出典

本記事は上記の公開情報をもとに The Sake Wire 編集部が要約・執筆したものです。画像は自社素材を使用しています。

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