The Sake Wire

焼酎の発酵CO2がドライアイスに

鹿児島の焼酎蔵で、発酵中に出るCO2を回収してドライアイスにする実証に成功し、酒造りの副産物を資源として使う試みが始まった。

濵田酒造 傳藏院蔵に設置されたCO2回収・精製プラント
濵田酒造 傳藏院蔵に設置されたCO2回収・精製プラント — 画像提供: PR TIMES(カーボンクライオキャプチャー)(プレスリリースより)

日本の蒸留酒・焼酎の蔵で、発酵中に出る二酸化炭素(CO2)を回収し、ドライアイスとして製品化する試みが成功しました。茨城県つくば市のスタートアップ、株式会社カーボンクライオキャプチャー(Carbon CryoCapture)は2026年6月25日、焼酎メーカーの濵田酒造株式会社(Hamada Syuzou)、国立大学法人鹿児島大学との共同研究の成果を発表しました。九州南部の鹿児島県いちき串木野市にある濵田酒造の傳藏院蔵(でんぞういんぐら)にプラントを置き、焼酎の発酵工程で出たCO2からドライアイスを作ったといいます。同社の調べでは、焼酎の発酵CO2を使ったドライアイス製造の実証は世界で初めてです。

発酵の副産物に目をつける

焼酎の発酵で生じるCO2を回収し、ドライアイスに加工する実証設備
焼酎の発酵で生じるCO2を回収し、ドライアイスに加工する実証設備 — 画像提供: PR TIMES(カーボンクライオキャプチャー)(プレスリリースより)

焼酎は、サツマイモや麦、米などを原料に、発酵させてから蒸留する日本の酒です。酵母がアルコールを作るとき、同時にCO2が出ます。このCO2は植物由来で濃度が高いのに、これまでほとんど活用されてきませんでした。一方、日本ではドライアイスの供給が不安定になっています。原料となるCO2の供給設備が古くなり、生産体制も縮小しているためです。カーボンクライオキャプチャー代表取締役の一ノ瀬泉氏によると、国内のドライアイス生産量は年間約30万トンにのぼり、冷凍食品の宅配や医薬品の保管などに使われていますが、原料の液化CO2が足りず、輸入が増えているといいます。

独自の吸収材で回収から製品まで

焼酎の発酵ガスから作られたドライアイス
焼酎の発酵ガスから作られたドライアイス — 画像提供: PR TIMES(カーボンクライオキャプチャー)(プレスリリースより)

回収には、同社の創業メンバーが国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)で開発した、PDMS(シリコーンの一種)系の吸収材を使っています。従来の多孔性の吸着剤と比べると、CO2が材料の中を広がる速さが数百倍あり、高濃度のCO2を効率よく取り込めるのが特長だとしています。3者の役割分担は、カーボンクライオキャプチャーがプラントの設計・運転、濵田酒造が実証の場所とCO2の供給、鹿児島大学が発酵プロセスに関する技術的な助言と地域連携を担当しています。

地域の中で循環させる

焼酎蔵で出たCO2を地域で使う循環モデルの図
焼酎蔵で出たCO2を地域で使う循環モデルの図 — 画像提供: PR TIMES(カーボンクライオキャプチャー)(プレスリリースより)

目指しているのは、その地域で出たCO2をその地域で使う循環型のモデルです。発表の時点では、2026年夏頃に地域での販売を始めることを目標に、品質評価と採算の検証を進めるとしていました。目標の夏頃はすでに過ぎていますが、販売が実際に始まったかどうかは、このリリースだけでは確認できません。将来的には年間200トン規模の製造を目指し、高濃度のCO2を出すほかの産業への応用も検討しています。濵田酒造の濵田光太郎社長は、植物を原料とする発酵から生まれるクリーンなCO2を地域の資源と捉えられたことは大きな意義がある、とコメントしています。

ドライアイスそのものがヨーロッパに届くわけではありません。それでも、日本の酒蔵が発酵の副産物まで資源として見直し始めていることは、造り手を知るうえで興味深い動きです。ヨーロッパで鹿児島の芋焼酎を見かけたら、サツマイモ由来の甘く香ばしい香りに注目してみてください。輸入業者や酒販店で蔵の環境への取り組みについて尋ねてみると、ボトルの向こうにある造り手の姿も見えてくるかもしれません。

参考・出典

本記事は上記の公開情報をもとに The Sake Wire 編集部が要約・執筆したものです。画像は自社素材を使用しています。

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