訳あり桃500kgで造る日本の桃エール
神奈川県のクラフトビール醸造所サンクトガーレンが、見た目の難で出荷できない山梨県産の桃を約500kg使った限定ビール「7種の桃のエール」を2026年9月17日に発売した。

7品種の「訳あり桃」を1回の仕込みに約500kg

サンクトガーレン(Sankt Gallen)は、東京の南西にある神奈川県厚木市の醸造所です。日本で小規模醸造が解禁される前からアメリカで地ビールを造って販売し、その活動がアメリカの雑誌に取り上げられました。この話題が日本の規制緩和の議論にも影響を与えたとされ、業界では「地ビール0号」と呼ばれています。ラガーは造らず、エールだけを醸造しています。
今回の「7種の桃のエール」は、東京の西にある果物の産地、山梨県の桃を使っています。原料は、傷や形の悪さなどで一般の市場に出せない「訳あり」の果実です。白凰、夢しずく、あかつき、まどか、川中島、ゆうぞら、さくらの7品種を合わせ、皮と種を除いてピューレにし、麦汁に加えます。1回の仕込みに使う桃は約500kgで、香料には頼らず、果実そのものの香りを引き出しています。
気候変動が生む「訳あり果実」の行き先

醸造所は2011年から、不定期でこの桃のビールを造ってきました。近年は、猛暑で実が大きくなる前に熟してしまったり、暖冬で冬を越したカメムシが果実に穴を開けて汁を吸ったりする被害が目立つといいます。関係者によると、収穫した桃の約3分の1が訳ありになる年もあるそうです。こうした果実の多くは捨てられるか家畜の飼料になるため、ビールの原料として使うことは農家にも歓迎されているといいます。同社は桃のほかにも、神奈川県産のオレンジ「湘南ゴールド」や和梨、長野県産のリンゴなど、外見に難がある果実でビールを造っています。
ネクターのような香りと、種まわりの酸味

醸造所はこのビールについて、桃のネクターのように濃く、果汁感があると説明しています。香りは熟した桃そのもので、甘さだけでなく、種のまわりの果肉のような酸味もあるとのことです。なお、果物の使用量が日本の酒税法で「ビール」と呼べる上限を超えるため、日本での正式な分類は「発泡酒」になります。
発売時点での主な提供先は、厚木の直営タップルームと、横浜などで開かれるビールイベントの樽生でした。ここ数年はイベントでよく売れるため瓶に回す分がなく、今年も発売時点では瓶での販売は決まっていませんでした。ヨーロッパで同じビールを手に入れるのは難しいでしょう。それでも、規格外の果実を大量に使い、香料なしで仕上げるという考え方は、ベルギーのフルーツビールに親しんだ読者にもなじみやすいはずです。日本のクラフトビールを扱う店で果実を使ったエールを見かけたら、原料の産地と品種を確かめてみてください。日本の醸造所がどんな果実を、なぜ使うのかを知る手がかりになります。
参考・出典
本記事は上記の公開情報をもとに The Sake Wire 編集部が要約・執筆したものです。画像は自社素材を使用しています。
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