血縁でも売却でもない、芙蓉酒造「二人の6代目」
長野県の芙蓉酒造が2026年9月、6代目蔵元と投資家による共同代表制へ移り、血縁でも売却でもない酒蔵承継の形を打ち出しました。

造りを継ぐ「蔵元」と、経営を担う「蔵主」

芙蓉酒造は、長野県東部の佐久市で1887年から酒を造ってきた蔵です。浅間山などの山々に囲まれた土地にあります。新しい体制では、1981年生まれの6代目蔵元・依田昂憲(よだ たかのり)さんが社長として造りのすべてに責任を持ちます。会長には投資家の千葉功太郎(ちば こうたろう)さんが就き、資本と経営を担います。千葉さんは日本のゲーム会社コロプラの創業メンバーで、副社長を務めたあと、ベンチャー投資ファンドを率いてきました。鎌倉で農園を営み、東京では自ら鮨店を構えています。
注目したいのは、二人がそろって「6代目」を名乗っている点です。この呼び名は依田さん自身が考えました。家業を継ぐ蔵元と、蔵そのものを引き受ける「蔵主」が同じ代を分け合い、どちらかが本家でどちらかが外部という関係にはしない、という考え方です。千葉さんは造りに口を出さないと明言しています。数年で株式を手放す「Exit」はこの蔵には無く、50年、100年単位で考えるとも話しています。後継者、資本、販路は日本中の酒蔵に共通する悩みです。同社はこの仕組みを、血縁にも売却にも頼らない「第三の道」として、ほかの蔵の参考にしたいとしています。
3社を統合し、100本を超えるタンクを共用に

これまで製造と販売は三つの法人に分かれていたため、会社をまたいでタンクを使えませんでした。千葉さんが全株式を取得して一社にまとめたことで、100本を超えるタンクと蔵のすべての区画を共用できるようになり、造れる酒の種類と量が増える見込みです。芙蓉酒造は日本酒「金宝芙蓉」のほか、40種類以上の農産物を焼酎にしてきた受託製造の技術を持っています。焼酎は日本の蒸留酒です。同社のそば焼酎「天山戸隠」は、国内コンクールのそば焼酎部門で7大会続けて1位になりました。
酒粕から生まれるジン「YOHAKHU」

ヨーロッパの読者にとって一番入りやすいのは、クラフトジン「YOHAKHU」でしょう。日本酒を搾ったあとに残る酒粕を蒸留し、長野の山で採れた11種のボタニカルを加えたジンです。東京ウイスキー&スピリッツコンペティション(TWSC)2026のジャパニーズジン部門で金賞を受けました。ウイスキーの貯蔵に使われたオーク樽で489日熟成させた版も、同じTWSCで銀賞を受けています。蔵は、10年後に売上の半分をノンアルコール飲料にするという目標も掲げています。
ヨーロッパで日本のジンを選ぶときは、ベースに酒粕(sake lees)や粕取焼酎が使われているかどうかを見てみてください。穀物由来のジンと香りの違いを比べるのも楽しみ方の一つです。千葉さんの鮨店では、YOHAKHUをソーダで割り、塩をひとつまみ加えた一杯を出しています。そして、家族経営のワイナリーや醸造所の継承が課題になっているヨーロッパの読者にとって、この「二人の6代目」がこれからどう歩むかは注目に値します。
参考・出典
本記事は上記の公開情報をもとに The Sake Wire 編集部が要約・執筆したものです。画像は自社素材を使用しています。
秋田の酒を EU で試す — €6 から
180ml のお試しサイズと、日本酒・ワイン・ビール・ジンのフルボトル。アムステルダムから EU 域内へ発送。

