The Sake Wire

新政・佐藤祐輔が描く、日本酒のテロワール

消えた酒米の復活と無農薬の田んぼ。秋田の新政酒造を率いる佐藤祐輔氏は、日本酒を世界最高峰の醸造酒にするという目標を掲げている。

酒蔵(イメージ)
酒蔵(イメージ) — 写真: Cindy Bissig(Unsplash)

日本の北部、秋田県にある新政酒造(あらまさしゅぞう)は、ここ十数年で注目を集める日本酒蔵のひとつです。八代目の佐藤祐輔氏は1974年生まれで、東京大学を卒業後に家業に入り、2012年に社長に就任しました。朝日新聞社のアエラスタイルマガジンに載ったインタビューの後編では、酒米と田んぼへのこだわり、そしてその先にある目標が語られています。

生酛・木桶・6号酵母という土台

佐藤氏の酒造りは、いくつかの約束事の上に成り立っています。使う酵母は「協会6号酵母」だけです。発酵の最初の段階(酒母)は、自然の乳酸菌の力を借りる伝統的な「生酛(きもと)」で造ります。仕込みには木桶を使い、添加物は加えません。原料米は秋田県産に限っています。昔ながらの技法を今の感覚で組み立て直し、土地の個性を酒に映すという考え方で、ワインのテロワールに近い発想だといえます。

消えた酒米をもう一度

夏の田んぼで育つ稲
夏の田んぼで育つ稲 — 写真: Tonmoy Bhakta(Pexels)

佐藤氏は、米についても思い込みにとらわれません。「フクノハナ」は1966年に開発された酒米ですが、育てにくいため、いつの間にか作られなくなっていました。佐藤氏は国の研究機関である農研機構の東北農業研究センターから種を取り寄せて栽培を始めます。この米で造った酒にはミカンのような風味があり、「タンジェリン」と名付けられました。稲の背が高くなりすぎて廃れた「改良信交」も、貴醸酒(仕込み水の一部を酒に置き換えて造る甘口の酒)に向いているとわかると、「見えざるピンクのユニコーン」という酒に生まれ変わりました。

鵜養の自然栽培田

無農薬で栽培される稲作地の水田風景
無農薬で栽培される稲作地の水田風景 — 写真: Declan Sun(Unsplash)

新政が使う酒米のほとんどは、秋田県内の鵜養(うやしない)地区で、契約農家と蔵の社員が育てています。2016年に酒米づくりを始め、今では約30町歩(約30ヘクタール)にまで広がりました。すべての田んぼが、肥料も農薬も使わない自然栽培です。水の深さを数センチ間違えるだけで雑草が一気に増えるため、雑草の種類を見ながら水位を上げ下げして抑えます。それでも、1シーズンに少なくとも5〜6回は手で草を取る必要があります。田んぼは風通しや日当たりに合わせて品種ごとに分けられ、「ヴィリジアン」「No.6」といった銘柄名で呼ばれています。その地図は、ブルゴーニュのブドウ畑を思わせます。

佐藤氏の目標ははっきりしています。世界最高クラスの醸造酒と並べても引けを取らない日本酒を造り、味だけでなく文化としても表現することです。来年の夏には、これまでのコラボレーション作品を集めた「新政展」を国内外で開く計画もあります。

ヨーロッパで新政の酒を見かけたら、ラベルに書かれた米の品種名に注目してみてください。「フクノハナ」のように品種を前面に出した酒は、ワインでブドウ品種を比べるのと近い感覚で楽しめます。生酛造りの酒は酸味が生き生きとしていることが多く、ワイングラスで少し冷やすと香りの違いが感じられることもあります。国外でも開かれる予定の「新政展」の情報も追いかけてみる価値がありそうです。

参考・出典

本記事は上記の公開情報をもとに The Sake Wire 編集部が要約・執筆したものです。画像は自社素材を使用しています。

秋田の酒を EU で試す — €6 から

180ml のお試しサイズと、日本酒・ワイン・ビール・ジンのフルボトル。アムステルダムから EU 域内へ発送。

ショップへ →