隠岐の島で蒸留、クラフトジン「GodSpirits」が自社製造へ
国際品評会で4つのメダルを持つ島根・隠岐のクラフトジンが、島内の新蒸留所での製造に切り替え、製造年入りの新ラベルで登場した。

日本海に浮かぶ隠岐諸島(島根県)の海士町(あまちょう)で造られるクラフトジン「GodSpirits(ゴッドスピリッツ)」が、2026年9月16日から新しいラベルで発売された。造り手のAMA Whiskey&Co.株式会社は、これまで本土の提携蒸留所で製造していたこのジンを、2026年6月に島内に開業した自社蒸留所「Distillery Drift Mark」での製造へ切り替えた。ボトルは従来の700mlに加えて375mlが加わり、2サイズ展開となる。
「隠岐を閉じ込めたジン」、ようやく島で蒸留
GodSpiritsは「隠岐を閉じ込めたジン」というコンセプトで開発された。鍵となるボタニカルは、隠岐で「ふくぎ」と呼ばれるクロモジ。クロモジは日本の山地に自生するクスノキ科の低木で、枝葉に爽やかな森の香りがあり、日本では古くから茶や楊枝に使われてきた素材だ。これに海士町産の柑橘「崎みかん」、隠岐名産の海藻アラメ、そして島の塩を作る過程で出るにがりが加わる。ジュニパーベリーやコリアンダー、アンジェリカ、カルダモンといった定番の素材に、梅やカモミール、ローズマリーなども組み合わせた、全16種のボタニカル構成である。
これまでは自社蒸留所がなかったため、島の素材を使いながらも蒸留は静岡県三島にあるグループの蒸留所で行われていた。今回、菱浦港近くの海沿いに完成したDistillery Drift Markで、仕込み水に海士町・天川の水を用いて島内で蒸留できるようになった。素材だけでなく水と土地まで含めて隠岐を表現する、というのが造り手の狙いだ。アルコール度数は46%で、味わいは柔らかなグリーンの香りにクロモジとみかんの柑橘感が重なり、ほのかな甘みが残るフィニッシュとされる。
ラベルに刻む製造年、ヴィンテージの発想

新ラベルには製造年「2026」が記されている。同じレシピと製法でも、原料の状態や収穫年、その年の気候によって香味はわずかに変わる。造り手はこれを均一な工業製品として消そうとするのではなく、その年ならではの表情として楽しんでもらいたいと考え、自社蒸留の開始を機に年号表記を始めた。ワインのヴィンテージに近い考え方をジンに持ち込んだ形で、年ごとの違いを飲み比べる楽しみが生まれる。
受賞歴も注目に値する。GodSpiritsは「The Gin Masters 2025」で金賞、「Feminalise Worldwide Competition 2026」で金賞、「Tokyo Whisky & Spirits Competition 2026」と「San Francisco World Spirits Competition 2026」でそれぞれ銀賞を獲得している。ロンドン、フランス、東京、サンフランシスコという4つの国際品評会での評価は、島の小さな蒸留所の製品としては目を引く成果だ。
島の小さな蒸留所とネットワーク
AMA Whiskey&Co.は2024年6月に海士町で創業した若い会社で、東京のWhiskey&Co.株式会社が展開する都市型マイクロディスティラリーのネットワーク「Whiskey&Co. Brands Network」の第1号加盟蒸留所としてDistillery Drift Markを開いた。同ネットワークは日本でバーボンスタイルのウイスキー造りを掲げており、Drift Markでもジンと並行してウイスキーの製造に取り組んでいる。蒸留所にはカフェ&バーが併設され、住民や旅行者が集まる拠点としての役割も担う。人口約2,000人規模の離島に蒸留所を置き、地域の活性化に結びつけようとする試みだ。
希望小売価格は700mlが6,000円(税込)、375mlが3,850円(税込)。公式オンラインストアや蒸留所併設ショップ、全国の取扱酒販店などで順次販売されている。
ヨーロッパの読者へ
現時点でEU向けの正規輸入の情報は発表されていないが、日本のクラフトジンは近年ヨーロッパの専門店やバーで存在感を増しており、日本産スピリッツを扱うインポーターやオンラインショップで見かける可能性は十分にある。探すときは「GodSpirits」「Gin from Ama」「Distillery Drift Mark」といった名前を手がかりにしてほしい。手に入ったら、まずは冷やしたストレートか、少量の水を加えてクロモジの森のような香りとみかんの柑橘感を確かめ、その後トニックで割ってみると、海藻とにがり由来のわずかな塩気がジントニックに奥行きを与えるのが感じられるかもしれない。そして年号入りのラベルは、この蒸留所が今後どう成長していくかを追いかける手がかりにもなる。2026年は「島で初めて蒸留した年」として、後から振り返る価値のあるヴィンテージになるかもしれない。
参考・出典
本記事は上記の公開情報をもとに The Sake Wire 編集部が要約・執筆したものです。画像は自社素材を使用しています。
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