真澄・宮坂社長が語る、輸出で「世界から学ぶ」理由
創業364年の「真澄」蔵元・宮坂醸造の宮坂直孝社長は、輸出の価値は売り上げだけでなく、海外から得られる学びにもあると語る。
長野県諏訪市の宮坂醸造は1662年創業の老舗です。日本各地の酒蔵で使われている「七号酵母」が生まれた蔵として知られ、現在は同じ県内の富士見町にある蔵ですべての酒を造っています。生産量は一升瓶(1.8リットル)換算で年間60万本です。2026年10月20日付の読売新聞のインタビューで、長野県酒造組合の会長も務める宮坂直孝社長(70)は、年商の約15%を占める輸出について話しました。社長は、輸出は売り上げのためだけでなく、海外で得られる情報が同じくらい大切だと述べています。欧米のワインや酒類のメーカーは長く国際競争を続けてきたため、品質や商品作りの考え方が進んでいます。日本酒もそれを取り入れる必要がある、というのが社長の考えです。
ボルドーで受けた厳しい評価
1990年代、国内の地酒ブームは頭打ちになっていました。そのころ、ワインに詳しい酒蔵仲間の紹介で、フランスのワイナリーを訪ねます。フランスのワイン業界も需要の伸び悩みに直面していましたが、品質を一から見直し、ツーリズムと輸出に力を入れていました。その姿から多くを学んだといいます。1999年にはボルドーの国際ワイン見本市「ヴィネクスポ」に初めて出展しました。海外のバイヤーからは、味だけでなくラベルやボトルまで批判されます。それでも批判を受けては考え直し、また出展することを繰り返しました。その中で、一つ一つの商品のコンセプトと個性ができあがっていきました。社長はこの積み重ねを、同社の歴史だと振り返ります。
米農家と「運命共同体」
輸出は、原料の米の問題ともつながっています。日本の米価は昨年高騰し、今年は一転して下がりました。長野県産の酒米(酒造りに向く米の品種)「美山錦」も、1俵(60キロ)あたり前年より4000円安くなりました。それでも社長は、ここで農家に値下げを迫るべきではないという立場です。稲作農家の過半数はすでに70歳以上です。10年後に日本で米が作られているかもわからず、カリフォルニア米で酒を造る日が来るかもしれない、とまで社長は語ります。高い米を買って価格に反映させ、縮んでいく国内市場で売るのは難しい道です。だからこそ海外に目を向ける、というのが社長の考えです。
海外は成長市場
社長は海外の変化を日本酒の好機とみています。健康志向から魚を食べる人が増え、富裕層も和食に関心を寄せているからです。冬季オリンピックの開催地として、長野の名前が海外で知られていることも強みだといいます。同社は米国、カナダ、香港、フランスなどに輸出しており、香港と中国・深センに営業拠点を置いています。
ヨーロッパで味わうなら、日本酒を扱う専門店や輸入業者の品ぞろえから、「Masumi」の名前を探してみてください。フランスでの見本市で鍛えられてきた蔵なので、欧州で磨かれたラベルやボトルのデザインにも注目です。社長が挙げた海外の魚食の広がりにならって、魚介料理と合わせるのもよいでしょう。各地の蔵が使う酵母のふるさとの酒として、ゆっくり味わってみてください。
参考・出典
本記事は上記の公開情報をもとに The Sake Wire 編集部が要約・執筆したものです。画像は自社素材を使用しています。
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