会計士出身の14代目が挑む玉乃光の世界戦略
京都・伏見の玉乃光酒造で、公認会計士出身の14代目が、日本酒を「日本の精神文化」として世界へ届ける戦略を進めている。

戦後に純米酒を復活させた蔵
玉乃光酒造は1673年、和歌山県で創業した。第二次世界大戦中の空襲で蔵を失い、戦後に京都市南部の伏見へ移った。伏見は兵庫県の灘と並ぶ日本有数の酒どころで、良質な地下水に恵まれている。
移転を決めた11代目が力を注いだのが、純米酒の復活だった。純米酒とは、醸造アルコールを加えず、米と米麹と水だけで造る日本酒のこと。戦時中は米が貴重だったため造られなくなっていた。原価も税も重く、売るのは大変だったが、この挑戦が京都で蔵が受け入れられる土台になった。現在も、米を多く削って造る上位等級の純米大吟醸と純米吟醸に絞って造っている。
会計士出身の14代目と「三つの強み」
14代目の羽場洋介氏は1979年生まれ。公認会計士として監査法人やコンサルティング会社で働き、飲食事業会社の経営にも関わってきた。蔵は妻の実家の家業で、継ぐ予定はなかったという。転機は2020年からのコロナ禍だった。売上が半減し、350年続いた歴史が途切れるかもしれないという危機感から、2023年に社長に就いた。義父である会長も妻の家業を継いだ立場で、承継は円滑に進んだと話す。
羽場氏は強みを三つ挙げる。京都駅から車で約15分という立地、すべて手作りの酒造り、そして戦後いち早く取り戻した伝統の製法だ。国内市場の約6割を、機械化が進んだ大手20社が占めている。そのなかで、手作りの希少性はますます高まるとみている。
輸出は「商品」ではなく「文化」として
同社は30以上の国と地域に輸出している。それでも羽場氏は、商品として売るだけでは限界があると言う。ワインと同じように、造り手の顔や考え方が伝わって初めて、高い価値をもつブランドになるという考えだ。日本国内の消費量は50年で4分の1に減った。そのなかで同社は、量を追うのではなく、日本の精神文化を伝える酒として価値を高めることを10年後の目標に掲げる。
ヨーロッパでこの蔵の酒を選ぶなら、ラベルの「Junmai」「Junmai Ginjo」の表記に注目したい。アルコールを加えない純米酒は、米そのものの味わいを感じやすいとされる。少し冷やしてワイングラスで香りを確かめ、ワインを選ぶときのように、造り手の歴史や考え方も知ったうえで味わうと、一杯の印象が変わるかもしれない。
参考・出典
本記事は上記の公開情報をもとに The Sake Wire 編集部が要約・執筆したものです。画像は自社素材を使用しています。
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