桜の花の酵母で醸す、東京工科大学の「染八エール」
東京工科大学がキャンパスの桜から分離した野生酵母を使い、八王子のブルワリーと共同でエールを商品化した。都内では初の桜酵母ビールだという。
キャンパスの桜から生まれた酵母「ソメハチ」
東京都西部の八王子市にある東京工科大学で、応用生物学部の松井徹教授が率いるバイオプロセス工学研究室が、キャンパス内のソメイヨシノの花から醸造用の酵母を分離した。ソメイヨシノは日本で最も広く植えられている桜の品種だ。研究室はもともと、身近な自然環境にいる微生物を食品などに生かす研究をしており、花に由来する酵母の多様性や発酵の特性を調べ、保存する活動の中でこの酵母が見つかった。酵母の種は、ビールやワイン、日本酒の醸造に広く使われるサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)で、「ソメハチ」と名付けられた。
数十株から選んだ一株で醸すエール
醸造を担当したのは、八王子に拠点を置くシェアードブルワリーだ。2025年6月から大学と共同で試験醸造を何度も重ね、数十の候補株の中から醸造に向いた一株を選んだ。研究室の学生も、のべ5名がこのプロジェクトに参加している。完成した「染八(そめはち)エール」(英語名 Sakura Wild Yeast Ale)は、野生酵母ならではのフルーティーで華やかな香りが特徴だ。試飲会では、夏向きの飲みやすさと個性のある香りが好評だった。アルコール度数は7%で、原材料は麦芽・ホップ・酵母だけ。日本の酒税法の分類では「発泡酒」として販売されている。350ml缶の6本セットで、価格は税込5,280円。ブルワリーのタップルームと公式オンラインショップで取り扱っている。
次は白ワイン、泡盛、そして日本酒へ
大学はこれを「桜プロジェクト」の第1弾と位置づけている。9月の発表時点では、都内のワイナリーと組んだ白ワイン、沖縄伝統の米の蒸留酒である泡盛、そして日本酒の醸造へと広げる計画だった。さらに、醸造の際にタンクの底にたまる澱(おり)を使ったパンも、地元のパティスリーや都内のベーカリーと商品化を進めている。研究成果を製品にすることに加え、学生が微生物の探索から製品化までを実際に経験する教育の場にもなっている。
今のところ、染八エールが日本国外で販売されるという発表はない。それでもヨーロッパの読者にとって注目したいのは、同じ酵母がビール、ワイン、泡盛、日本酒という異なる酒でどんな香りを出すかという点だ。花から分離した酵母を使う日本酒は以前からあり、華やかな香りの酒が多いとされる。輸入日本酒を選ぶときは、ラベルや説明に「花酵母」とあるか確かめてみるといいだろう。ソメハチ酵母の日本酒が完成したら、ベルギーのセゾンや自然発酵ワインのような「酵母が香りを決める酒」と飲み比べると、違いを楽しめるかもしれない。
参考・出典
本記事は上記の公開情報をもとに The Sake Wire 編集部が要約・執筆したものです。画像は自社素材を使用しています。
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