廃業蔵の明治の木桶から、蔵独自の酵母が復活
2000年に廃業し2021年に復活した愛知県の酒蔵「敷嶋」が、名城大学と組み、旧蔵の木桶から失われた蔵独自の清酒酵母を取り戻した。

廃業とともに途絶えた「蔵の酵母」
日本酒ブランド「敷嶋(しきしま)」を造る伊東株式会社は、1788年創業の愛知県半田市の酒蔵です。名古屋の南にある知多半島は、かつて船で江戸(現在の東京)へ酒を運んだ酒どころで、敷嶋は中部地方でも最大級の蔵でした。しかし需要の落ち込みで2000年に廃業します。2021年、9代目の伊東優さんが人手に渡っていた土地と建物を買い戻し、酒造りを再開しました。
日本酒の発酵を担う酵母は、香りや味わいを大きく左右します。いまは多くの蔵が、日本醸造協会が配布する「協会酵母」や各県が開発した酵母を使っています。一方、かつての敷嶋は自社で酵母を培養していましたが、廃業とともに失われました。伊東さんは旧蔵から出てきた昔の製造記録の酵母欄に「SK」で始まる見慣れない記号を見つけ、蔵に独自の酵母があったことを知ります。
木桶から見つかった7株

計画が動き出したきっかけは、名城大学農学部応用微生物学研究室の加藤雅士教授との再会でした。2024年12月、研究室の学生たちが20年以上酒造りをしていない旧本蔵に入り、明治時代から残る木桶から試料を集めました。酵母は乾くと死にやすく、生き残っている見込みは低いと考えられていました。加藤教授自身も、成功する確率は五分五分とみていたといいます。
2025年2月、培地から「酵母らしき菌」が7株選び出されました。遺伝子を調べると、清酒酵母と同じサッカロマイセス・セレビシエという種でありながら、協会酵母とは別の株であることがわかりました。同年11月に愛知県の公的な研究機関で試験醸造したところ、アルコールに強く、バナナのような香りとメロンを思わせる旨味をもつ酒ができました。
蔵の歴史を味わう一本へ
この酵母は蔵での試験醸造にも使われ、2026年4月に地元のイベントで試験販売されました。地元の米農家と愛知県の3つの蔵が、同じ酒米「夢吟香(ゆめぎんが)」でそれぞれ酒を造る共同企画の一本です。蔵は今後、この酵母の酒を看板商品に育てていく方針です。伊東さんは、全国でも少なくなった古い蔵の建物を後の世代に残すことを、酒造りを復活させた大きな理由に挙げています。
ヨーロッパでこの酒を手に取れるのはまだ先かもしれません。それでも注目点ははっきりしています。ワインやビールの「土着酵母」と同じように、日本酒でも酵母は個性の大きな源です。ボトルの説明や輸入業者の資料で酵母の名前や由来を確かめられれば、協会酵母の酒との香りの違いを考える手がかりになるでしょう。
参考・出典
本記事は上記の公開情報をもとに The Sake Wire 編集部が要約・執筆したものです。画像は自社素材を使用しています。
秋田の酒を EU で試す — €6 から
180ml のお試しサイズと、日本酒・ワイン・ビール・ジンのフルボトル。アムステルダムから EU 域内へ発送。

