The Sake Wire

価格は価値の総和――SAKE HUNDREDの高級戦略

酒蔵の後継者ではない起業家が開いた「ラグジュアリー日本酒」という市場――SAKE HUNDREDの生駒龍史氏が、その戦略を語った。

高級日本酒を味わうためのグラスとテーブル
高級日本酒を味わうためのグラスとテーブル — 写真: Marko Sun(Unsplash)

東京のラジオ局TOKYO FMの番組「BRAND NEW LINK」(9月26日放送)に、日本酒ブランド「SAKE HUNDRED」を展開する株式会社Clearの代表取締役CEO、生駒龍史(いこま・りゅうじ)氏が出演した。生駒氏は老舗酒蔵の家に生まれたわけではない。それでも、高価格帯の日本酒という、これまで日本では珍しかったカテゴリーをつくりあげた。番組では、その発想と戦略が語られた。

約70年ぶりの新規参入と高価格帯

日本では、酒蔵として新しく参入することが規制で強く制限されている。生駒氏によると、そのため約70年間、新しい事業者がほとんど現れなかった。Clearはもともと、日本酒専門のウェブメディア「SAKETIMES」を運営しており、酒蔵や酒販店とのつながりをすでに持っていた。周囲からは応援されることが多かったが、本当に成功するのかについては、業界内にも慎重な見方があったという。

当時、日本で売られている日本酒の大半は1本2,000〜3,000円ほどだった。SAKE HUNDREDは品質を徹底して高め、その相場とはまったく違う価格帯を打ち出した。立ち上げで生駒氏が重視したのは、業界の先輩や流通に影響力を持つ人々との対話である。「この挑戦が成功すれば、どんな未来が来るのか」を具体的に伝え続けた。その一方で、業界の評判を気にしすぎないことも大切にしている。業界ばかりを見ていると、最も大切な顧客が置き去りになる、という考えからだ。

「価格は価値の総和」という考え方

上質な日本酒グラスのクローズアップ
上質な日本酒グラスのクローズアップ — 写真: Szymon Shields(Pexels)

ブランドの誕生から8年がたち、高級日本酒はひとつのカテゴリーとして定着してきた。生駒氏はその理由を「価格の多様性」で説明する。Tシャツや時計には手頃なものから高価なものまで幅がある。しかし日本酒には、高価格帯をつくる動きが十分になかった。本物の価値には相応のお金を払いたいと考える人は、国内にも海外にもいる。

そこで生駒氏が掲げるのが「価格は価値の総和」という言葉だ。味や品質だけでなく、造られた背景、歴史、デザイン、社会的な評判、企業の姿勢まで、すべての要素を積み上げた結果として価格が決まる、という考え方である。だから、どれか一面だけを整えても意味がない。おいしさは何より大切だが、ラグジュアリーにはそれだけでは足りないと生駒氏は話す。

日本酒専門メディアのSAKE Streetによると、その具体例のひとつが、群馬県(東京の北西にある内陸の県)で1886年に創業した永井酒造との協業だ。マイナス5℃で貯蔵・熟成させたヴィンテージ酒「礼比(らいひ)」を、16万5,000円で発売した。

ヨーロッパの読者へ:高級日本酒の見方

ワイングラスに注がれた日本酒を味わう様子
ワイングラスに注がれた日本酒を味わう様子 — 写真: Marko Sun(Unsplash)

生駒氏が描くのは、世界中の人々が日本酒によって豊かな暮らしを楽しむ未来だ。ヨーロッパで高価格帯の日本酒を選ぶときも、ワインと同じように「価格の内訳」を考えてみるとよい。誰がどの蔵で造ったのか。熟成しているか、どのように熟成したのか。精米歩合(米の外側をどれだけ削ったかを示す数値で、低いほど雑味が少なく繊細な味になりやすい)はどうか。ボトルやパッケージには、どんな考えが込められているか。飲むときは香りが開きやすいワイングラスを使い、冷やしすぎないこと。温度が少しずつ上がるにつれて変わる香りや余韻を、時間をかけて楽しみたい。

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