The Sake Wire

被災の町・陸前高田で、33歳がゼロからワイン造り

津波で姿を変えた岩手県陸前高田市で、33歳の及川恭平さんが耕作放棄地からブドウを育て、自身初の白ワイン「満ちていく」を完成させた。

ブドウ畑の畝と収穫されたブドウ
ブドウ畑の畝と収穫されたブドウ — 写真: Markus Winkler(Pexels)

震災が問いかけた「生き残った意味」

丘陵に広がるブドウ畑の情景(イメージ)
丘陵に広がるブドウ畑の情景(イメージ) — 写真: Peter Dyllong(Pexels)

陸前高田市は、本州北東部にある岩手県の太平洋沿岸の町です。2011年の東日本大震災では津波で大きな被害を受けました。当時高校生だった及川恭平さんは、自宅も家族も無事でした。それでも町の風景が一変したことで、受験よりも先に「どう生きるか」「自分が残された意味は何か」を考えるようになったといいます。地元に根づく産業をつくりたいと考え、関東の大学で食を学びました。そこで、比較的温暖で水はけのよい故郷の土地がブドウ栽培に向いていると気づきます。卒業後はワイン専門商社とフランスのワイナリーで経験を積み、2020年に故郷へ戻ってブドウを植え始めました。

耕作放棄地から生まれた初の白ワイン

ブドウの樹の不要な芽を摘む作業(イメージ)
ブドウの樹の不要な芽を摘む作業(イメージ) — 写真: Markus Koellmann(Pexels)

及川さんは、使われなくなった農地を少しずつ借り集めてきました。畑は今では約7500坪(約2.5ヘクタール)あります。初期投資には苦労しましたが、農地を貸したり譲ったりしてくれる地元の人たちに支えられてきたと話します。果実酒の製造免許を持っていないため、醸造は県外のワイナリーに頼んでいます。そして2025年8月、初めての白ワイン「満ちていく」が約100本できあがりました。及川さんにとってワインは、町の人や文化、インフラを映すものであり、さまざまな産業をつなぐ「ハブ」にもなり得るものです。地元の飲食店や漁師と組み、ワインと食と自然を楽しむツアーをこれまで10回開き、延べ200人が参加しました。

海辺の塩気と「ワイン特区」

白ワインと貝類の組み合わせ(イメージ)
白ワインと貝類の組み合わせ(イメージ) — 写真: Daniel Balarezo(Pexels)

及川さんによると、陸前高田のブドウで造るワインには塩気とミネラル感が出るといい、魚介、なかでも貝と合わせやすいそうです。ツアーで訪れる市内のすし店「鮨まつ田」でも、地元の魚とのペアリングが好評でした。店主の松田光代さんも、土地の風土を生かしたワインに期待しています。2026年3月には、陸前高田市が国の「ワイン特区」に認定されました。小規模な事業者でも果実酒の製造免許を取りやすくする制度で、及川さんが数年前から市に働きかけてきたものです。岩手県の沿岸部では初めての認定です。及川さんは現在、元そば店の建物を改修して醸造所を準備しています。免許を取った後、2027年2月に地元のブドウで仕込みを始める見込みです。

「満ちていく」はわずか約100本で、ヨーロッパで手に入るワインではありません。注目したいのは、2027年から始まる「地元で完結するワイン造り」がどう進むかです。海辺で育ったブドウの塩気とミネラル感は、ゼーラントの牡蠣やムール貝、ガリシアの貝料理に親しんだヨーロッパの読者なら想像しやすいでしょう。震災から15年を経た町が新しいワイン産地として歩み出す姿を、これからも見守りたいところです。

参考・出典

  • FNNプライムオンライン(岩手めんこいテレビ)「「ワインで故郷を盛り上げたい」33歳がゼロからの挑戦 震災を原点に陸前高田市でワイン造り 岩手県」 https://www.fnn.jp/articles/-/1052429

参考・出典

本記事は上記の公開情報をもとに The Sake Wire 編集部が要約・執筆したものです。画像は自社素材を使用しています。

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