日本酒の参入規制が生んだ「クラフトサケ」の挑戦
日本酒の新規免許が原則出ない日本で、別の酒類免許を使って新しいジャンルを切り開いた醸造所「稲とアガベ」が、輸出と規制緩和の両方で存在感を強めている。
免許が取れないなら、新しいジャンルをつくる
日本では清酒(日本酒)の製造免許が原則として新しく発行されず、新規免許は約70年ゼロとも報じられている。福岡県北九州市出身の岡住修兵さんは、秋田県の新政酒造で4年半酒造りを学んだ。その後2021年に、本州北部で日本海に突き出た男鹿半島(秋田県男鹿市)で「稲とアガベ醸造所」を開いた。使ったのは「その他の醸造酒」の免許だ。日本酒でもワインでもビールでもない酒のための免許で、要件を満たせば誰でも取れる。この免許で、米と麹にほかの原料を加えて一緒に発酵させる「クラフトサケ」を造り始めた。造り方の土台は日本酒だが、副原料を加えるため法律上は清酒にならない。仲間と立ち上げたクラフトサケブリュワリー協会の活動を通じて新規参入は30件増え、今では国内外の日本酒蔵もクラフトサケを造り始めているという。
ホップ、ブドウ、海藻――50種類を超える試み
看板商品は、米と麹にホップを合わせて発酵させた「花風(はなかぜ)」。ほかにもブドウ、リンゴ、茶、梅、海藻などを使い、これまでに50種類以上を造ってきた。商品は最大で半年待ちで、同社によるとクラフトサケ市場のおよそ半分を占める。この1年で輸出先は中国、アメリカ、フランスなど10カ国に広がり、輸出は前年の3倍になった。ミシュランガイド掲載店や「ワールドベストバー」に選ばれたバーでも採用が増えている。同社は2026年中に製造規模を3倍に広げる計画だ。
次の目標は「日本酒特区」
岡住さんは2020年の時点で、日本酒の新規免許を取ることを目標に掲げていた。今は内閣府の特区制度を使って、男鹿で日本酒を造れるようにする「日本酒特区」の新設を求めている。日本酒業界には反対の声もあるが、政府に規制緩和のワーキンググループができ、議論が動き始めた。特区が実現すれば、日本酒を造りたい若い醸造家が男鹿に集まるはずだ、と岡住さんは考えている。
ヨーロッパでクラフトサケを探すときは、ラベルの「Craft Sake」という表記や、米と麹以外の原料名を見るとよい。ホップの香りがする花風は、クラフトビールや自然派ワインが好きな人にとって入りやすい一本だ。原料が多彩なので幅広い料理に合わせやすい。冷やしてワイングラスで香りを楽しむほか、燗にしてもおいしいという愛好家の声もある。日本酒の免許制度がこれからどう変わるかにも注目しながら飲むと、一杯の背景がいっそう面白くなる。
参考・出典
- ICC INDUSTRY CO-CREATION「男鹿のまちを酒の聖地に!クラフトサケが醸す新たな文化で、未来に日本酒をつなぐ「稲とアガベ」(ICC FUKUOKA 2026)」
- SAKE Street「「日本酒造りの新規免許獲得を目指す」 - 「稲とアガベ」代表・岡住修兵さん(2/2)」
- SAKE Street「定番酒への愛を熱く語る - 「交酒 花風」稲とアガベ(秋田県)」
本記事は上記の公開情報をもとに The Sake Wire 編集部が要約・執筆したものです。画像は自社素材を使用しています。
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