The Sake Wire

茨城初の女性杜氏と元警官、星の名の酒「すてら」をつなぐ

筑波山麓の稲葉酒造で、廃業寸前の蔵を継いだ茨城県初の女性杜氏と、警視庁機動隊から転身した娘婿が、世界15カ国に届く「すてら」を次の世代へ渡そうとしている。

東京の北東にある茨城県つくば市。筑波山のふもとで江戸時代末期から酒を造る稲葉酒造には、二つの珍しい経歴があります。ひとつは、茨城県で初めて杜氏(酒造りの現場責任者)になった女性が当主を務めていること。もうひとつは、その後継者がつい数年前まで東京の警察官だったことです。2026年6月に地元メディア「いばナビ」が二人を取材しました。

「女人禁制」を越えて生まれた「すてら」

六代目の蔵元杜氏・稲葉伸子さん(1965年生まれ)は、もともと地元の百貨店に勤めていました。そのころ実家の蔵は、日本酒離れで売上が落ち込み、杜氏の引退も重なって廃業の危機にありました。伸子さんは継ぐと決めましたが、当時の酒蔵には女性を造りの場から遠ざける古い慣習が残っていて、周りの偏見だけでなく両親からも反対されたといいます。厳しい言葉を受けるたびに反骨心を燃やし、夫の後押しも受けて百貨店を辞めました。県の研究機関である茨城県産業イノベーションセンターで醸造を一から学び、2000年に自ら造った新しい銘柄「すてら」(ラテン語で「星」)を出しました。

「すてら」は筑波山の水を使う純米大吟醸です。純米大吟醸は、米を半分以下まで削り、醸造アルコールを加えずに造る、高級な等級のひとつです。もろみを布袋に入れて吊るし、重さだけで落ちる雫を集める「袋吊り」という手間のかかる搾り方を採っていて、果実のような香りと澄んだ口当たりが特徴とされています。

15カ国へ、そして酒粕から焼酎へ

「すてら」は国内外の品評会で受賞を重ね、いまでは世界15カ国で飲まれています。イタリアの有名なワイン誌に日本酒として初めて取り上げられ、ニューヨークの有名店とは独占契約を結んでいます。2023年には敷地内に「筑波山蒸溜所」を開きました。酒を搾ったあとに残る酒粕を蒸留してプレミアム焼酎(日本の蒸留酒)を造り、蒸留後の残りかすは契約農家の田んぼに肥料として戻しています。原料の米から田んぼへと戻る、ひとつの循環をつくりました。

機動隊から酒蔵へ、稲葉健太郎さん

伸子さんの次女の夫・稲葉健太郎さん(1997年生まれ)は、警視庁の機動隊員から転身し、2023年に蔵に入りました。強豪ラグビー部で主将を務めた経験から、造りの合言葉は「One for all, All for one」。2025年からは製造責任者を務めています。初めて全工程を任された年には、日本最大の日本酒コンテストである全国新酒鑑評会で入賞しました。今後は看板銘柄の「男女川(みなのがわ)」と「すてら」を磨き上げ、いずれは自分の銘柄を立ち上げることも考えているそうです。

ヨーロッパで探すなら、ラベルの「Stella」や「Minanogawa」の表記が目印です。袋吊りの雫酒や、濾過も加水もしていない生原酒は香りが繊細なので、冷蔵庫で保管し、ワイングラスで冷やして飲むと持ち味が分かりやすいといわれます。生産量の少ない「すてら」の生酒は、毎年わずか7タンクしか造られません。現当主の世代から次の世代へ移りつつあるこの蔵の味が、これからどう変わっていくのか、注目されます。

参考・出典

本記事は上記の公開情報をもとに The Sake Wire 編集部が要約・執筆したものです。画像は自社素材を使用しています。

秋田の酒を EU で試す — €6 から

180ml のお試しサイズと、日本酒・ワイン・ビール・ジンのフルボトル。アムステルダムから EU 域内へ発送。

ショップへ →