イチローズモルトの新拠点、北海道・苫小牧でグレーン本格稼働
イチローズモルトの造り手が北海道に建てたグレーン専用の苫小牧蒸溜所が2026年1月に本格稼働し、原酒をすべて国産にしたブレンデッドへ動き出した。
北海道にグレーン専用の蒸溜所を建てた理由
ブレンデッドウイスキーは、大麦麦芽だけで造るモルト原酒と、トウモロコシなどの穀物を主な原料とするグレーン原酒を合わせて造ります。イチローズモルトで知られるベンチャーウイスキーは、これまで東京の北西にある埼玉県の秩父でモルト原酒を造ってきました。今回、創業者の肥土伊知郎(あくと・いちろう)氏が代表を務めるベンチャーグレイン株式会社が、日本最北の大きな島である北海道の苫小牧市にグレーン専用の蒸溜所を建てました。目指すのは、原酒をすべて日本国内で造ったイチローズモルトです。肥土氏は、北海道の冷涼な気候と大きな寒暖差がウイスキー造りに向くと考え、苫小牧の硬度の低い軟水も高く評価しています。
トウモロコシからニューメイクまで
原料はトウモロコシとモルトです。車で約15分の苫小牧港から輸入し、高さ約13メートルのサイロ4基に蓄えます。1日に使う原料は合わせて22トンにのぼります。トウモロコシは異物を取り除いてから細かく砕き、熱と圧力で蒸してデンプンを柔らかくします。トウモロコシには糖を生み出す酵素がないため、60〜65度まで冷ました液に砕いたモルトを加え、約1時間かけて糖化させます。発酵はステンレス製の15基のタンクで72時間行い、アルコール度数約8%の発酵液(もろみ)ができます。
蒸留には、長い歴史を持つカフェ式(コフィー式)蒸留機を使います。最新の連続式蒸留機より効率は劣るとされますが、香りや味の成分を多く残せるのが利点です。高さ13メートルの設備でも、どこで原酒を切り分けるかは、人が香りと味を確かめながらアルコール度数0.1%刻みで決めています。取材したDear WHISKYは、蒸留したての原酒(ニューメイク)について、アルコールの刺激が少なく甘い香りが豊かだったと伝えています。原酒は度数63.5%に調整して樽に詰め、樽を立ててパレットに積む方式で保管します。3棟の貯蔵庫に約6万樽が入りますが、すぐに満杯になる見込みで、新しい貯蔵庫の建設も計画されています。
稼働直後の現場と、ヨーロッパでの楽しみ方
工場長の橋本崇宏さんは、新しい土地と新しい設備で造りの方向性を固めている段階だと話します。設備を使い込むと味も変わっていくため、その中でも品質を安定させることを重視しているそうです。製造部の滝本彩乃さんは、稼働直後の冬は夜の気温がマイナス20度まで下がり、配管が凍ったと振り返ります。
グレーン原酒は樽で熟成させてから製品になるため、苫小牧の原酒が瓶に詰められるまでには年単位の時間がかかります。それまでの間は、カフェ式で造られたグレーンウイスキーを一度単独で味わってみるという楽しみ方もあります。ブレンドの土台となる、穀物由来の甘さややわらかな口当たりがよく分かります。国産原酒100%のイチローズモルトが発表されたら、ラベルや説明でグレーン原酒の産地を確かめ、今のブレンドと飲み比べる楽しみもあるでしょう。
参考・出典
本記事は上記の公開情報をもとに The Sake Wire 編集部が要約・執筆したものです。画像は自社素材を使用しています。
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