白鶴の37㎡マイクロ蔵、21作目で初の淡麗辛口
大手酒造の白鶴酒造が、37平方メートルの小さな醸造所で、シリーズ21作目にして初めて軽快な「淡麗辛口」の純米大吟醸を造った。
白鶴酒造は兵庫県神戸市にある、日本を代表する大手酒造のひとつです。同社の「白鶴酒造資料館」(神戸市東灘区)の中には、2024年9月に本格稼働した小さな醸造所「HAKUTSURU SAKE CRAFT」があります。広さはわずか37平方メートルです。米を洗う工程から蒸し、麹づくり、発酵、搾り、ろ過、瓶詰めまでを一室で行える設備があり、杜氏(醸造責任者)と蔵人の2人が中心になって、1回あたり100kgの米で仕込みます。大量生産をする大手にとっては、社内の実験室のような場所です。
甘口路線から、あえて逆方向へ
これまでの20作は、若い世代や女性、訪日客を意識した、香りと甘みが豊かな「濃醇甘口」が中心でした。新作「No.21 純米大吟醸 淡麗辛口」を手がけた伴光博杜氏(62)は、いまの消費者の好みは淡麗辛口より芳醇甘口に傾いていると見ています。そのうえで、あえて流れと逆のスタイルを選びました。着想のもとになったのは、「酒博士」と呼ばれた醸造学者・坂口謹一郎の短歌です。のどに引っかからず水のように通っていく酒のような歌を詠みたい、という内容で、伴杜氏は技術者としてこの人物を尊敬しています。
「水のような酒」と「酒らしさ」の両立
難しいのは、軽さを突き詰めるほど酒らしい味わいが薄れ、酒らしさを残すほど水のような口当たりから遠ざかることです。そこで、名前は「淡麗辛口」でも極端な辛口は目指さず、香りをできるだけ残した中辛から中口の味に設計しました。それに合わせて吟醸酵母と発酵方法の組み合わせを選び、夏の麹は冬とは仕上がりが違うと分かったため、麹菌も普段とは別のものに替えています。原料は自社開発の酒米「白鶴錦」を100%使い、精米歩合は50%です。精米歩合50%とは、米粒の外側を半分削り落としたという意味です。純米大吟醸は、醸造アルコールを加えずに、よく磨いた米だけで造る最上位の区分にあたります。720mlで7,700円(税込)、294本限定で9月12日に発売されました。伴杜氏は「納得の出来」と話す一方、水のようなのど越しと呼べるかどうかは飲む人に判断してほしいと語っています。
ヨーロッパの読者が注目したい点
294本という少なさを考えると、この1本自体を手に入れるのは難しいでしょう。それでも注目したい点があります。白鶴は人気が出た酒質を今後の商品開発に生かす考えを示しているため、この実験の成果がいずれ定番商品に表れるかもしれません。また、この話は「淡麗」と「濃醇」という日本酒の味の大きな軸を知るきっかけにもなります。日本酒を選ぶときはラベルの「淡麗辛口」「濃醇甘口」といった表示に目を向け、両方のタイプを冷やしてワイングラスで飲み比べてみてください。軽い酒は牡蠣や白身魚のような繊細な料理と、濃い酒はチーズや焼いた肉と合わせると、違いがよく分かります。
参考・出典
本記事は上記の公開情報をもとに The Sake Wire 編集部が要約・執筆したものです。画像は自社素材を使用しています。
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