The Sake Wire

山田錦が北へ 福島大が寒さに強い新品種

「酒米の王様」と呼ばれる山田錦を寒さと風雨に強くした新品種を福島大学の研究チームが開発し、その米で最初の酒が造られた。

実りの季節を迎えた東北地方の水田
実りの季節を迎えた東北地方の水田 — 写真: Declan Sun(Unsplash)

日本酒造りでもっとも有名な酒米(酒造りに向くよう育てられた米)、山田錦。この米を育てられる地域が、大きく北へ広がるかもしれません。東北地方南部の福島県にある国立大学、福島大学の食農学類付属発酵醸造研究所の研究チームが、山田錦の変異株を組み合わせて、寒い地域でも育てやすい新品種を開発しました。

「酒米の王様」を北の気候に合わせる

風雨に負けない背の低い稲が並ぶ水田
風雨に負けない背の低い稲が並ぶ水田 — 写真: Ariokh Thio(Pexels)

山田錦は1936年に西日本の兵庫県の農業試験場で生まれ、酒造りに適した性質から「酒米の王様」と呼ばれています。ただ、酒米には大粒に育てるために実りまで時間がかかる品種が多く、冬が早く来る寒い地域では収穫が間に合いにくいという難しさがあります。研究所の松田幹特任教授によると、山田錦を栽培できる北の限界は、これまで福島県南部のあたりとされてきました。

新品種は、早く実る「早生(わせ)」の性質と、背が低くて風雨でも倒れにくい「短稈(たんかん)」の性質をあわせ持っています。研究チームは、両方を備えた山田錦系の品種は世界で初めてだとしています。松田氏は、本州最北端の青森県まで栽培できるようになるとみており、台風などの災害にも強いと説明しています。これまで山田錦に向かなかった東北地方での広がりにも期待を寄せています。

最初の一本は「食農学類 弐」

開発は2023年、福島市の農業法人「未来農業」との共同研究として始まり、「福島大学弐号」という名前で品種登録の手続きが進んでいます。2025年夏に初めての収穫を迎え、2026年2月に鈴木酒造店の協力で仕込みが行われました。できあがったのは、火入れ(加熱殺菌)をしていない、うっすらとにごった酒「食農学類 弐」です。720ミリリットル入り150本だけの限定品で、4月6日から大学の生協で1980円で売り出されました。清酒としての販売も予定されていると伝えられています。

ヨーロッパの読者が注目したいこと

中心が白く濁った大粒の酒米
中心が白く濁った大粒の酒米 — 写真: Cindy Bissig(Unsplash)

今回の酒は数が少ないため、ヨーロッパで手に入れるのは難しいでしょう。それでも、山田錦の酒そのものはヨーロッパでも見つけやすい存在です。ボトルの裏ラベルや輸入業者の商品説明で原料米の欄を確かめ、山田錦が兵庫県産なのか、それ以外の産地なのかに目を向けてみてください。東北で育った山田錦の酒が増えていけば、同じ品種でも土地や造り手によって味がどう変わるのかを飲み比べる楽しみが広がります。新しい品種の名前が日本の外にも届くかどうか、見守りたい動きです。

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