The Sake Wire

炎を越えた一本、笹正宗が誓う同じ地での再建

福島・喜多方の笹正宗酒造が火災で蔵を失うなか、焼け残ったタンクの酒を仲間と救い出して瓶詰めし、同じ場所での再建を宣言した。

酒蔵の貯蔵タンクが並ぶ様子
酒蔵の貯蔵タンクが並ぶ様子 — 写真: Luo Jin Hong(Unsplash)

2026年6月、福島県喜多方市の笹正宗酒造(Sasamasamune Brewery)で火災が起きました。喜多方市は東北地方南部、福島県西部の会津地方にある町です。火は酒蔵から隣の母屋にまで広がってほぼ全焼し、およそ2万5000本分の酒が失われました。出火したとき、社長の岩田悠二郎さんと専務の岩田高太郎さんは出張で東京にいました。全国新酒鑑評会で福島の酒が注目を集めていた時期だっただけに、悠二郎さんは「福島の酒の盛り上がりに水を差してしまった」と申し訳なさを語っています。

焼け残った貯蔵タンクと、駆けつけた仲間

希望が残っていたのは、火を免れた貯蔵庫のタンクでした。火災から3日後、会津地方の酒蔵や酒販店の仲間が集まり、タンクに残っていた酒を運び出しました。その間は台風の影響で気温が低く、酒の品質も奇跡的に保たれていたといいます。日本酒は温度変化に弱く、ふつうは低温で管理されます。この涼しさが、救出が間に合った理由のひとつになりました。

「1818ー2026ー」に込めた覚悟

8月7日、悠二郎さんは会見を開き、支援への感謝を伝えたうえで、瓶詰めを終えた酒を披露しました。旧蔵で仕込んだ最後の酒で、ラベルには「1818ー2026ー」と記されています。2026の後ろに続くハイフンは、これからも同じ場所で酒造りを続けるという意思の表れだと説明しました。

3日後に福島県内限定で発売されると、各地で売れました。高太郎さんは、売れるうれしさと同時に「本当に最後の酒」であることへの切なさも口にしています。福島市の居酒屋では、会津名物の馬刺しや会津地鶏と一緒に味わう客の姿があり、物語を知ると味わいも変わるという声が聞かれました。悠二郎さんは、受け継いできた酒造りと歴史を大切にしながら、50年、100年先へつながる蔵を同じ場所に築きたいと話しています。

この「奇跡の酒」は福島県内だけで販売されたため、ヨーロッパで手に入れるのは難しいでしょう。それでも、この物語から会津の酒に目を向けることはできます。ヨーロッパの日本酒専門店やオンラインショップで「Aizu」「Fukushima」の産地表示を探し、福島の酒を飲み比べてみるのもひとつの方法です。地元の組み合わせにならって、生の赤身肉のカルパッチョや鶏のグリルなど、素材の味が素直に出る料理と合わせてみてください。蔵の再建がどう進み、新しい笹正宗がいつ造られるのか、今後の知らせにも注目です。

参考・出典

本記事は上記の公開情報をもとに The Sake Wire 編集部が要約・執筆したものです。画像は自社素材を使用しています。

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