The Sake Wire

世界のMW30人が山梨へ 甲州の実力を現地で検証

2026年3月、世界のマスター・オブ・ワイン30人が日本のワイン産地を5日間かけて巡り、山梨では固有品種・甲州の熟成力と栽培の工夫に注目が集まった。

「マスター・オブ・ワイン(MW)」は、ロンドンに本部を置くマスター・オブ・ワイン協会が認定する資格で、ワイン業界で最も権威があるとされる。資格を持つのは世界で約420人だけだ。2026年3月、このMWのうち30人が日本に集まり、5日間の産地視察ツアーを行った。参加者は欧州、米国、シンガポール、オーストラリア、南アフリカ、インドから来ている。東京でのセミナーと試飲会、長野県の訪問に続き、一行は東京の西にある山梨県を訪れた。山梨は日本ワインの発祥の地で、生産量、畑の面積、ワイナリーの数のどれをとっても国内最大の産地だ。

なぜ今、日本ワインなのか

国際的なワイン専門家たちが試飲を行う様子
国際的なワイン専門家たちが試飲を行う様子 — 写真: Pavel Danilyuk(Pexels)

MW協会は毎年、各地の産地を訪ねるスタディツアーを開いている。これまでにスペインのヘレスやウルグアイ、ペルーなども訪れており、有名な銘醸地より、これから注目されそうな産地が選ばれることが多い。国際コンクールで日本ワインや日本酒の受賞が続き、協会の中でも日本への関心が高まっていたという。今回は100人を超える参加希望が集まった。ツアーをまとめたのは、日本に住む日本人として初めてMWになった大橋健一MWだ。大橋MWは、甲州は鉄分(Fe²⁺)が比較的少ないため生魚と合わせても嫌な風味が出にくいこと、またアルコール度数が自然と低めになり、軽やかなスタイルが好まれる今の流れに合うことを強みに挙げた。

甲州をめぐる評価

熟成した白ワインのボトルが並ぶ様子
熟成した白ワインのボトルが並ぶ様子 — 写真: Yoko Correia Nishimiya(Unsplash)

甲州は日本固有のブドウ品種で、果皮が厚く湿気に強い。勝沼醸造では、同じ方法で醸造した3つの区画(下岩崎、鳥居平、伊勢原)の甲州を飲み比べた。インド初のMWであるソナル・ホランドMWは「伊勢原2025年」を、若いうちから楽しめて熟成もできるワインだと高く評価した。米国の評価誌『ワイン・アドヴォケイト』で編集長を務めたリサ・ペロッティ=ブラウンMWは、グレイスワインで1957年の甲州を試飲し、この品種が長期熟成に耐えると実感したと話す。ボルドーのシャトー・ル・パンのオーナー一家の一員であるフィオナ・モリソンMWは、甲州で成功しているのは日本だけだと述べ、世界に一つしかない品種を持つことが国際市場での大きな武器になると見ている。

雨の国が育てた栽培技術と大胆な醸造

雨対策として傘や覆いをかけられたブドウの房
雨対策として傘や覆いをかけられたブドウの房 — 写真: You Le(Unsplash)

MWたちが特に関心を寄せたのは、雨の多い気候に合わせた工夫だ。勝沼醸造の「傘掛け」は、房一つずつに紙の傘をかけて雨や病気から守り、農薬を減らす方法だ。マンズワインは、樹の上にフィルムを張って雨を遮る「レインカット」を紹介した。塩山の98WINEsは、白ワイン用に収穫したブドウの約1割を日光で約2週間乾かし、発酵中のタンクに戻すという珍しい造りを見せた。

ヨーロッパでも甲州を扱うワインショップや日本食レストランは増えている。まずは若い甲州を刺身やカルパッチョ、白身魚のグリルと合わせ、軽さと控えめな香りを確かめてみてほしい。次に樽発酵や熟成を経た甲州を飲み比べると、MWたちが話題にした奥行きの違いが感じ取れるかもしれない。ラベルでは、生産者名とあわせて畑や区画の名前にも注目したい。モリソンMWによれば、今回の視察で得た印象はSNSを通じて各国のソムリエに広がっていくという。近いうちに、地元のワインリストで甲州を見かける機会が増えるかもしれない。

参考・出典

本記事は上記の公開情報をもとに The Sake Wire 編集部が要約・執筆したものです。画像は自社素材を使用しています。

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