日本酒蔵が挑む栗樽熟成ウイスキー「林太郎」
鳥取の老舗酒蔵・千代むすび酒造が、日本酒酵母で仕込み栗樽で3年熟成させたシングルモルト「林太郎 Chestnut」を発売した。

日本酒蔵が造るウイスキーが、いま注目を集めています。西日本の日本海側にある鳥取県境港市の千代むすび酒造は2026年4月、シングルモルト「Chiyomusubi Single Malt Japanese Whisky 林太郎 Chestnut 3年」を発売しました。熟成には、ウイスキーではまれな栗の木の樽を使っています。
日本酒の技術から生まれたウイスキー

千代むすび酒造は1865年創業で、2025年に160周年を迎えた老舗です。1984年に蒸留部門を立ち上げ、2021年春にウイスキー造りを始めました。原料は厳選した麦芽で、発酵には日本酒の酵母を使います。酒蔵ならではのこの方法で、独自の風味を目指しています。銘柄名の「林太郎」は、蔵の基礎を築いた三代目社長・岡空林太郎にちなんだものです。同社はすでに30か国以上へ商品を輸出しています。
栗樽が生む、やわらかな甘み

ウイスキーの多くはオーク樽で熟成されます。一方、栗樽は口当たりをやわらかくし、ほのかな甘みと軽い香ばしさを与えるとされます。蔵によると、味わいはなめらかで、ナッツやキャラメルを思わせる奥行きがあります。原料は麦芽100%で、着色料のカラメル色素は使っていません。ウイスキー杜氏(製造責任者)の米田真氏は、国産木材の新樽とシングルカスク(ひとつの樽だけの原酒を瓶詰めすること)にこだわっていると話します。今回は5回目のリリースで、和栗の樽から生まれた一本です。度数50%の通常版(700ml、税込17,600円)に加え、59.8%のカスクストレングス版も限定で用意されました。前回のシェリー樽版は、予約開始から3時間30分で完売しています。
「本物のジャパニーズウイスキー」へのこだわり

日本の酒税法では、ウイスキーの産地の定義がスコッチほど厳しくありません。そのため、海外で造られた原酒を日本で瓶詰めしただけの商品が「日本産」として売られる例もありました。これを受けて業界団体の日本洋酒酒造組合は自主基準を定めています。原料に麦芽を必ず使い、糖化・発酵・蒸留を国内で行い、国内の木樽で3年以上熟成させることなどが条件です。千代むすび酒造は、すべての工程を国内で行い、この基準に沿って造っています。
ヨーロッパの読者にとっては、日本酒蔵がウイスキーに参入する流れを知るのにちょうどよい一本です。今回の商品は蔵の自社オンラインストアだけで販売され、生産量も限られています。そのため、ヨーロッパで手に入れるのは簡単ではありません。それでも、ボトルや専門店のリストで「Japanese Whisky」の表記を見かけたら、蒸留と熟成がどこで行われたかを確かめてみてください。それだけで本物を選びやすくなるでしょう。栗樽ならではのナッツのような甘みは、少量の水を加えるとより感じやすくなるかもしれません。今後、千代むすび酒造の日本酒とウイスキーが並んで紹介される機会にも注目です。
参考・出典
本記事は上記の公開情報をもとに The Sake Wire 編集部が要約・執筆したものです。画像は自社素材を使用しています。
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