千葉の協同組合が醸す生酛にごり「童豊露」
千葉県多古町の労働者協同組合・鮭酒造が、組合員が自ら育てた在来の酒米で造った生酛純米にごり2種を限定発売した。

酒蔵を持たずに始めた「みんなの酒蔵」

鮭酒造(さけしゅぞう)は2024年に設立された労働者協同組合です。労働者協同組合は、そこで働く人たち自身がお金を出し合い、運営にも加わる組織の形です。拠点は東京の東、千葉県香取郡多古町。千葉県でも米どころとして知られる町です。目指しているのは、誰もが自由に酒造りを楽しめる「みんなの酒蔵」をつくることです。ただし、自分たちの蔵はまだありません。完成するまでは近くの酒蔵の協力を得て酒を造っており、今回の2本も香取市の東薫酒造で造られました。今季で2年目の仕込みになります。
精米歩合90%、酵母を加えない生酛造り
「生酛純米にごり 鮭 童豊露(どぶろ)」の原料は、組合員が多古町で育てた「中生神力(なかてしんりき)」という在来品種の酒米です。農薬と化学肥料を使わず、アヒルの一種であるアイガモを田に放して雑草や虫を抑えるアイガモ農法で育てています。精米歩合は90%です。精米歩合とは、米を削ったあとに残る割合のことで、90%なら外側を1割だけ削ったことになります。高級な吟醸酒では半分以上を削ることも珍しくないため、米の味をかなり残した造りといえます。
酒母(発酵の元になる部分)は生酛で仕込んでいます。生酛は、空気中や蔵にいる乳酸菌の力で酒母を育てる伝統的な方法です。そのうえで培養酵母を加えず、もろみは44日間かけて非常に低い温度でゆっくり発酵させました。米のうま味をしっかり引き出すことを狙った造りです。ろ過も加水もしない原酒で、火入れ(加熱殺菌)は瓶に詰めてから1回だけ行っています。アルコール度数は15度、容量は480mLです。
地元産の柚子を丸ごと使ったもう1本

もう1本の「童豊露 ゆず」は、同じにごり酒に、多古町で農薬を使わずに育てた柚子を加えたものです。柚子は日本の香りの強い柑橘で、果汁を丸ごと搾って入れたうえ、削った皮もたっぷり加えています。米のうま味と柑橘の香りを一度に味わえる1本です。どちらも7月1日から順次発送が始まり、組合の公式オンラインショップで販売されました。
今回の2本は数量限定で、ヨーロッパで手に入る見込みは今のところありません。それでも、注目する価値のある話題です。生産者が組合をつくり、米づくりから酒造りまで自分たちで関わる形は、ヨーロッパの協同組合ワイナリーにも通じます。ヨーロッパでも、ラベルに「Kimoto(生酛)」や「Nigori(にごり)」と書かれた酒や、精米歩合の高い(あまり削っていない)純米酒は見つけやすくなってきました。にごり酒を飲むときは、瓶をそっと逆さにして澱を混ぜ、よく冷やして酸味のある料理やチーズと合わせてみてください。日本の小さな造り手たちの新しい動きを知る入口になるかもしれません。
参考・出典
本記事は上記の公開情報をもとに The Sake Wire 編集部が要約・執筆したものです。画像は自社素材を使用しています。
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