The Sake Wire

笹一酒造、映画『襲名』を祝う限定の「旦」を発売

富士山に御神酒を納める山梨の笹一酒造が、歌舞伎の名跡継承を記録した映画『襲名』を祝う限定の純米大吟醸を発売しました。

朝日を浴びる日本酒の盃と酒器
朝日を浴びる日本酒の盃と酒器 — 写真: Liana S(Unsplash)

山梨県大月市の笹一酒造は、三池崇史監督のドキュメンタリー映画『襲名』の公開を祝う限定酒「襲名 奉祝酒 旦 純米大吟醸」を、2026年9月25日の映画公開と同じ日に発売しました。9月15日から公式オンラインストアで先行予約を受け付けていました。数量限定での販売です。山梨県は東京の西、富士山の北側にある県で、この酒蔵は1661年の創業から360年以上続いています。

映画『襲名』と、富士山がつなぐ縁

信仰の対象として仰がれる富士山の風景
信仰の対象として仰がれる富士山の風景 — 写真: Guohua Song(Pexels)

映画『襲名』は、歌舞伎で最も格の高い名跡とされる「市川團十郎」の継承を追った作品です。十三代目市川團十郎白猿さんと八代目市川新之助さんが、親子で同時に名を受け継いだ襲名披露を記録しています。第83回ヴェネチア国際映画祭のアウト・オブ・コンペティション部門に正式出品され、映画祭の独立賞「Cinema & Arts Award」の最優秀作品賞を日本映画として初めて受けました。襲名披露公演の祝幕を手がけた現代美術家の村上隆さんが、作品を仕上げていく過程も映画に収められています。市川家は山梨にルーツがあると伝えられており、富士山への信仰が根づく山梨の酒蔵が、この継承を酒で祝う形になりました。

35%まで磨いた山田錦と超軟水

「旦(DAN)」は、笹一酒造が最上級の銘柄として造るブランドで、名前は富士山の山頂から昇る朝日を表しています。今回の限定酒は2種類あります。どちらも山梨県産の山田錦だけを使い、精米歩合は35%です。精米歩合は、削ったあとに残る米の割合のことで、35%なら米粒の外側の65%を削っています。数字が小さいほど、香りが華やかで雑味の少ない酒になりやすいとされます。仕込み水は、蔵の敷地に湧く超軟水の「富士御坂清流水」(硬度は約8mg/L)です。

特装版(720ml、44,000円)は特上の山田錦を使っています。口当たりがなめらかで、やわらかな甘みと米の旨みが広がり、静かで長い余韻へと続きます。村上隆さんの祝幕を印刷した、長さ約80cmの蛇腹式の冊子が付きます。通常版(720ml、16,500円)は、果物を思わせる香りと上品な甘みがあり、しなやかな酸味が後味をすっきりとまとめます。こちらには祝幕を印刷したカードが付きます。

富士山に御神酒を納める360年の蔵

笹一酒造がある大月は、江戸時代に富士山へ向かう巡礼者たちの出発点として栄えた町です。蔵は今も、富士登山の北口にあたる北口本宮冨士浅間神社に御神酒を納めています。「旦」シリーズは国際的な評価も受けています。フランスの日本酒コンクール「Kura Master 2025」ではプラチナ優秀賞、2026年の「雄町サミット」では最高位の最優等賞を受賞しました。ANAの国際線ファーストクラスでも提供されています。

ヨーロッパでは、今回の限定品を手に入れるのは難しいと考えられます。ただ、「旦」という銘柄名と、富士山のふもとで造られる超軟水の酒という背景は覚えておく価値があります。日本酒専門店や輸入業者の品揃えで「DAN」や「Sasaichi」の名前を見かけたら、少し冷やしてワイングラスに注いでみてください。香りの広がりと、軟水ならではのやわらかな口当たりが感じられるかもしれません。ヴェネチアで評価されたこの映画がヨーロッパで上映される機会があれば、鑑賞の前後に一杯を合わせるのも楽しいでしょう。

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