松江「李白」、パウチ酒と20年のデータで挑む
島根県松江市の李白酒造は売上の約4割を海外で上げながら、パウチ入りの日本酒や20年分の醸造データを使い、老舗の酒蔵の次の形を探っている。

李白酒造(Rihaku Shuzo)は、日本海に面した島根県の県庁所在地、松江市にある酒蔵です。創業は1882年(明治15年)で、5代目の田中裕一郎社長によると、創業当時からの建物は築およそ140年になります。看板銘柄の「李白」を中心に、旨味がありながら後味がすっきりとした、食事に合う酒を造っています。地元テレビ局の日本海テレビが、この老舗が輸出、容器、造り方の三つの面で変化を続けている様子を取材しました。
売上の約4割は海外、欧州にも出荷
李白酒造では、海外市場が売上の40%近くを占めています。輸出先は14の国と地域で、蔵の出荷場にはドイツ、スイス、スペイン、オーストラリア、アメリカ向けの荷物が並んでいました。輸出は田中社長の父の代に始まり、30年以上続いています。一方で田中社長は、アメリカの関税政策や中国向け輸出の厳しい条件を不安材料に挙げます。国内では原料の米の価格も上がっていて、自社の努力だけでは対応しきれない段階に来ているといいます。そのため、海外に加えて国内でも新しい市場を開拓する必要があると考えています。
瓶ではなくパウチという選択
新しい市場に向けた試みの一つが、2024年に発売したパウチ(袋状の容器)入りの日本酒です。定番の酒を、キャップで閉め直せるパウチに詰めています。瓶より軽くて割れないので、持ち運びやすいのが特徴です。田中社長は、ドラッグストアで多くの商品がパウチ入りになっているのを見て思いつき、酒造メーカーが自ら手がける再封可能なパウチは他に例が見当たらなかったと話しています。
造り手にとっての利点もあります。日本酒は品質を保つために「火入れ」という加熱殺菌をします。瓶は約60度で加熱しますが、急に温度を上げ下げすると割れることがあります。パウチなら最高80度まで、急な温度変化にも耐えられます。10年、20年と長く熟成させるなら瓶が向いていますが、早めに飲む酒なら品質はパウチの方が安定する、というのが田中社長の見方です。
杜氏に頼らない、20年分のデータ

日本の酒蔵の多くは、仕込みの季節(李白酒造では9月から4月末まで)に「杜氏」と呼ばれる醸造責任者の職人とそのチームを期間限定で雇い、経験と勘に頼って酒を造ってきました。李白酒造は20年前から、米の状態、発酵の進み具合、作業環境などを記録してデータにしてきました。仕込みの日程も含め、前年のデータを参考にしながら、今では杜氏を置かずに社員だけで酒を造っています。背景にあるのは、職人の高齢化と担い手不足です。田中社長は、数値を使わずに体で覚えてきた職人たちに敬意を示しつつ、才能のある人を見つけて杜氏に育てるのは、データを取るよりはるかに難しいと話しています。
ヨーロッパで楽しむなら、ドイツ、スイス、スペインなどで日本酒を扱う輸入業者や専門店で「Rihaku」の名前を探してみてください。食事に合わせることを前提にした酒なので、単体で飲むより、塩気や旨味のある料理と一緒に味わうと良さが分かりやすいはずです。今回の報道では、パウチ入りの商品が欧州で販売されるかどうかには触れていません。関税や米価の上昇が続く中で、データを使った造りが30年以上続く輸出の品質をどう支えていくのか、注目したいところです。
参考・出典
本記事は上記の公開情報をもとに The Sake Wire 編集部が要約・執筆したものです。画像は自社素材を使用しています。
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