The Sake Wire

スピーカーの振動で醸す日本酒、オンキヨーが秋田の蔵と発売

音響機器メーカーのオンキヨーが秋田県の酒蔵・大納川と組み、発酵中の醪に音楽の振動を与えて造った純米吟醸生原酒を2026年7月17日に発売した。

日本酒(イメージ)
日本酒(イメージ) — 写真: Liana S(Unsplash)

発酵中の醪に地元の曲を聴かせる

発酵中の醪(もろみ)が入ったタンク
発酵中の醪(もろみ)が入ったタンク — 写真: tokyofoodcast(flickr, CC BY)

新商品は「大納川天花 音響加振酒 純米吟醸生原酒」です。造ったのは株式会社大納川で、東北地方の日本海側にある秋田県の横手市大森町に蔵があります。1914年に酒造りを始めた蔵で、2019年の醸造年度からは、すべての酒を米と米麹だけで造る「純米造り」に切り替えました。貯蔵もタンクをやめ、すべて瓶で行っています。今回は、発酵中の醪(蒸した米・麹・酵母・水が混ざって発酵している状態)にスピーカーで音楽を聴かせました。曲は、秋田のシンガーソングライター栗林聡子さんが作った蔵のテーマソング「霜月神楽」です。蔵のある大森町は、国の重要無形民俗文化財に指定された神楽「霜月神楽」が伝わる土地として知られています。蔵によると、穏やかなこの曲を聴いて育った酵母から、やわらかく優しい味わいの酒ができたといいます。

原料米は酒造りに向く品種「五百万石」だけを使っています。精米歩合は60%で、玄米の外側を40%削っています。純米吟醸は、よく磨いた米で造る上位の等級です。今回の酒は無濾過の生原酒なので、ろ過も加熱殺菌も水を加える調整もしていません。アルコール度数は15%、容量は720mlです。

オーディオの「振動」技術を醸造へ

スピーカーのコーン。オンキヨーは音響機器で培った振動技術を醸造に応用している
スピーカーのコーン。オンキヨーは音響機器で培った振動技術を醸造に応用している — 写真: Alexey Demidov(Pexels)

大阪に本社を置くオンキヨー株式会社は、スピーカー開発で培った「音」と「振動」の技術を食品分野に応用しています。この取り組みを「Matured by Onkyo」と名付け、今回の酒のラベルにもこの名前を入れました。同社は2025年に関連する特許を2件取得しています。対象物や発酵の状態に合わせて振動の条件を最適化し、ハイレゾ成分を含む幅広い周波数で振動を与えることで、品質の再現性を高め、ばらつきを抑えられるとしています。

研究面では、2020年から東京農業大学醸造科学科と共同研究を続けています。振動や音が、酵母の増殖、香り成分、有機酸にどう影響するかを調べるものです。また金沢工業大学とは、猛暑で品質が落ちた米のデンプンを振動で溶けやすくできる可能性を確認しました。今後はワイン、発酵食品、化粧品にも応用を広げる計画です。ただし、味への効果は現時点では企業側の説明です。

ヨーロッパから楽しむには

ワイングラスに注いだ冷えた生原酒
ワイングラスに注いだ冷えた生原酒 — 写真: Volker Loschek(Pexels)

発表では、海外での販売には触れていません。ただ、蔵が酵母に聴かせた曲「霜月神楽」は、大納川のウェブサイトで誰でも聴くことができます。酒と曲を一緒に楽しんでほしいというのが蔵の提案です。ワインの熟成や発酵に音響振動を使う研究は、ヨーロッパのワイン産地の読者にとっても興味深いテーマでしょう。今後「Matured by Onkyo」と書かれた酒を見かけたら、同じ蔵の普通の純米吟醸と比べてみるのも一案です。生原酒は必ず冷蔵で保管し、冷やしてワイングラスで味わうと、香りを確かめやすくなります。

参考・出典

本記事は上記の公開情報をもとに The Sake Wire 編集部が要約・執筆したものです。画像は自社素材を使用しています。

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