70年閉ざされた酒免許、男鹿が特区で挑む
秋田県男鹿市の酒造り計画が政府に認定され、約70年続く国内向け清酒の新規免許規制を見直す議論が改めて注目されている。
70年間閉ざされた国内向けの新規免許
日本では、日本酒(清酒)の蔵を新しく立ち上げることがほぼできません。酒税法は需要と供給のバランスを保つことを理由に、清酒製造免許の新規発行を、既存の蔵の移転や合併などの場合に限っています。2020年度の法改正で輸出専用の清酒に限って新規免許が解禁されましたが、国内で売る清酒への新規参入は約70年間認められていません。秋田県の地元紙、秋田魁新報は9月4日の社説で、この規制の柔軟な見直しを政府に求めました。
男鹿の「酒スタートアップシティ」構想
社説のきっかけは、秋田県(本州北部の日本海側)の男鹿市がまとめた酒造りの計画が、政府の「地場産業成長プラン」に認定されたことです。市町村が作った地場産業の発展計画を国が認定し、支援する制度です。男鹿市の計画は、市内の醸造所「稲とアガベ」を中心に「男鹿・酒スタートアップシティ」を掲げます。清酒や、清酒の技術をもとに果物などの副原料を加えた新ジャンル「クラフトサケ」を造りたい若者を全国から募り、資金面の支援に加えて醸造技術や経営を指導します。目標は2036年度までに酒造り関連で50人の雇用を生むことです。
ただし、ここにも規制の壁があります。稲とアガベは現在、輸出用の清酒とクラフトサケを造っており、2023年に男鹿市と共同で、国家戦略特区(特定の地域に限って規制を緩める国の制度)での清酒製造の規制緩和を提案しました。計画の実現には特区の認定が必要です。
縮む国内市場と広がる海外需要
清酒の出荷量は1973年度の約177万キロリットルをピークに、2024年度は約38万キロリットルまで減り、酒蔵もピーク時の半分以下の約1500蔵になりました。一方で、純米酒や吟醸酒などの「特定名称酒」(原料や精米の度合いなどの条件を満たした上位区分)の割合は伸びています。海外需要も上向きで、ユネスコ無形文化遺産への「伝統的酒造り」の登録も追い風とみられます。社説は、小規模生産が認められて個性的な地ビールが各地に生まれたビールの例を挙げ、清酒にも新しい担い手が必要だと訴えています。
ヨーロッパの読者に注目してほしいのは、この規制のため、日本で新しく酒造りを始める人は「輸出用の清酒」か「クラフトサケ」という形を選ぶしかないという点です。新しい造り手の酒には、日本国内より先に海外で出会える可能性があります。輸入業者の説明やラベルで「クラフトサケ」や新しい醸造所の名前を見かけたら、果物などの副原料が清酒の味わいにどう重なっているかに注目して味わってみてください。男鹿の特区が認められるかどうかは、今後の日本酒の造り手がどこまで多様になるかを占う試金石になりそうです。
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