The Sake Wire

クラフトサケの旗手「稲とアガベ」、酒から町をつくる

「なまはげ」で知られる秋田県男鹿市で、新ジャンル「クラフトサケ」を醸す岡住修兵さんが、醸造所を起点に町を変えつつある。

日本の田園(イメージ)
日本の田園(イメージ) — 写真: Huu Huynh(Pexels)

「日本酒」と名乗れない、新しい米の酒

クラフトサケは、日本酒の造り方を土台にしながら、法律上は「日本酒(清酒)」と名乗れない米の醸造酒です。日本の酒税法では、日本酒の原料は米、米麹(蒸した米に麹菌を育てたもの)、水に限られています。果物やハーブなどを加えて発酵させると「その他の醸造酒」に分類されます。さらに日本では現在、日本酒の製造免許が新しく発行されません。そのため日本酒を造りたい若い醸造家たちは、あえて副原料を加えるなどして、この新しい枠組みで酒造りを始めました。2022年には醸造所「稲とアガベ」を中心に「クラフトサケブリュワリー協会」が設立され、稲とアガベ代表の岡住修兵さんが会長を務めています。

醸造所を核に、ラーメン店もホテルも

澄んだスープの塩ラーメン
澄んだスープの塩ラーメン — 写真: Mesh(Unsplash)

稲とアガベが醸造所を開いたのは約5年前です。場所は本州北部、日本海側にある秋田県の男鹿市。鬼の面をかぶった「なまはげ」の風習で知られ、人口減少に悩む町です。醸造所ができてから、周辺にはラーメン店やピザ店、ホテルが次々に開業しました。象徴的なのが、2023年に駅前で開いた「男鹿塩らーめん おがや」です。きっかけは、ラーメンチェーン「一風堂」を展開する力の源ホールディングスの会長が稲とアガベの酒を気に入り、仕入れを申し出たことでした。あいにく在庫がなかったため、岡住さんは逆に男鹿でのラーメン店開業を提案し、同社がレシピを監修しました。わが子が大きくなった時に「ラーメン店もない町」と言われたくない。そう笑う岡住さんは、人を巻き込むことが自分の仕事だと語り、男鹿を「酒の町」にすることを目指しています。

海外では「new sake」として

日本の外では、こうした法律上の区別は関係なく、米の醸造酒はまとめて「SAKE」として扱われます。輸出に力を入れる岡住さんによると、各国の輸入業者は「new sake」や「innovative sake」といった伝わりやすい言葉で紹介しており、海外の飲み手も「こんなSAKEもあるのか」と素直に受け入れているそうです。一方で「クラフトサケ」という呼び名には協会内でも反対意見が多く、もっと良い名前があれば変えたいと岡住さんは話しています。

ヨーロッパでこのジャンルを探すなら、商品説明の「craft sake」「new sake」といった表記に加えて、裏ラベルの原材料欄に注目してください。米と麹に何が加えられているかで、香りや酸味の方向性が大きく変わります。普段飲んでいる日本酒と並べて、副原料が味わいにどう効いているかを確かめてみると、この新しい酒の違いが見えてくるかもしれません。

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