The Sake Wire

輸出専用の日本酒を国内へ 福井・吉田酒造の逆輸入

福井の吉田酒造が、香港企業との合弁で造りアジアで評価を得た輸出専用の日本酒を、2026年8月に日本国内でも発売した。

輸出のイメージ
輸出のイメージ — 写真: Athanasios Papazacharias(Unsplash)

日本海に面した福井県の吉田酒造は2026年8月、これまで海外向けにだけ造ってきた日本酒を日本国内でも売り出した。蔵があるのは、禅寺の永平寺で知られる永平寺町だ。日本経済新聞によると、この酒は香港の企業と合弁で生産し、アジアで実績を重ねてきた。日本の飲食店などから国内でも扱いたいという声が出ていたという。販売先は高級レストランやホテルで、富裕層の需要を狙う。

海外で実績を積み、日本へ戻す

吉田酒造は2022年に香港企業と合弁会社をつくり、輸出を本格的に始めた。翌2023年には生産能力を大きく増やすため、永平寺町に新しい蔵「吉峯蔵(きっぽうぐら)」を整えている。多くの蔵はまず国内で売り、余力を輸出に回す。吉田酒造はその逆で、海外で評価を固めてから国内に持ち込んだ。合弁の設立から1年で新しい蔵を整えた経緯からは、海外のパートナーが売り先であるだけでなく、生産への投資を支える存在にもなっていることがうかがえる。

桶売りの蔵から「永平寺テロワール」へ

初夏の水田に並ぶ若い稲
初夏の水田に並ぶ若い稲 — 写真: Huu Huynh(Pexels)

吉田酒造は1806年の創業で、長く「桶売り」を主な仕事にしてきた。桶売りとは、造った酒を他の蔵に売る取引で、その酒は買った蔵の銘柄として出回る。自社の銘柄で勝負する道に切り替えた今は、地元産の米だけを使う。醸造アルコールを加えず、米・米麹・水だけで造る「純米」の酒しか造らない。米と水にこだわった「永平寺テロワール」を掲げており、自社の田で育てた山田錦(高級な酒に広く使われる酒米の品種)で造る純米大吟醸「白龍」は、2021〜22年の造りを対象にした全国新酒鑑評会で金賞を受けた。純米大吟醸は、米を外側から半分以上削って造る純米酒の最上位の区分だ。醸造の責任者である杜氏は吉田真子さん、経営は母の由香里さんが担う。

ヨーロッパでの楽しみ方

今回の輸出専用の酒は、アジアと日本の高級店向けとされ、ヨーロッパで売るという話はまだ出ていない。まずは吉田酒造の「白龍」の名前を、酒屋やレストランのリストで探してみたい。ラベルに「純米」や「山田錦」とあれば、この蔵の考え方がよく表れた1本だ。純米大吟醸はよく冷やしてワイングラスで飲むと、香りと米のやわらかな甘みが感じやすい。日本海の魚介に恵まれた土地の酒なので、白身魚や貝の料理と合わせるのがおすすめだ。アジアで育った輸出先行のブランドが、次にヨーロッパへ広がるかどうかにも注目したい。

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