The Sake Wire

元商社マンが廃蔵を再生、愛媛の山里から世界へ

10年以上酒蔵がなかった愛媛の山あいの町で、東京の元商社マンが築150年超の元酒蔵を再生し、世界を見据えた酒造りを始めた。

酒蔵(イメージ)
酒蔵(イメージ) — 写真: Cindy Bissig(Unsplash)

2026年5月30日、愛媛県久万高原町(くまこうげんちょう)で「久万高原醸造所」が蔵開きを迎えました。愛媛県は西日本の四国にあり、久万高原町は県内の山あいにある町です。地元の酒蔵が廃業してから10年以上、町では酒が造られていませんでした。蔵に選ばれたのは、築150年を超える元酒蔵の建物です。この建物をよみがえらせたのは、町とそれまで縁のなかった東京在住の元商社マン、上林恭一郎さんです。

空き家の酒蔵から始まった輸出の構想

酒蔵(イメージ)
酒蔵(イメージ) — 写真: Celuici(wikimedia, CC BY-SA)

上林さんは商社に勤めたあと、「大好きな日本酒を世界に広めたい」と考えて、2023年に会社「SAKEFRONTIER」を立ち上げました。きっかけは、元酒蔵の空き家があると知ったことです。最初に描いたのは「酒蔵を復活させて日本酒を輸出する」という計画でした。自治体が空き家と使いたい人を結びつける「空き家バンク」制度を通じてこの建物を知り、実際に見に行ってひと目で気に入ったといいます。海外からの旅行者に酒造りを体験してもらう構想も話したところ、町も支援を約束しました。今後はアジアなど海外への輸出も視野に入れています。

「日本酒ではない」新しい一本、露峰

蔵開きでふるまわれたのは「露峰」です。町内で育てた愛媛県の酒米「しずく媛」を使い、今年の春から仕込みました。上林さんによると、この酒は日本の分類では日本酒(清酒)ではなく「その他の醸造酒」に入ります。主な原料は米、米麹、水で、造り方も日本酒と同じです。違うのは、発芽玄米を少し加えていることと、町内産の杉のチップで香りをつけていることです。木桶で醸したような風味を目指しています。造るのは2種類で、米の粒子を残した「にごり酒」と、もろみを搾らずに仕上げる「どぶろく」です。雑味がなく、すっきりとキレのある味に仕上がったといいます。蔵開きに来た人たちからは「爽やかで飲みやすい」「あっさりしていながらコクもある」という声が聞かれました。

山里の地酒を世界とつなぐ

山あいの小さな町と棚田が広がる風景を思わせる写真
山あいの小さな町と棚田が広がる風景を思わせる写真 — 写真: MacroLingo LLC(Pexels)

上林さんは今後、生活と仕事の拠点を本格的に久万高原へ移し、途絶えていた地酒の文化を取り戻したいと考えています。昔は人の多かったこの町に、再びにぎわいを呼び戻すのが目標です。地酒を目当てに、国内外から人が集まる場所にしたいと話しています。

現時点で、ヨーロッパへ出荷する予定は伝えられていません。それでもこの話は、日本の小さな造り手の新しい動きを知る手がかりになります。日本酒の造り方を土台に、副原料や木の香りで個性を出す酒が生まれているのです。こうした酒はラベルに「日本酒」と書かれないことがあります。輸入品を選ぶときは、原料欄に米と米麹があるかを確かめるのが近道です。にごり酒やどぶろくはよく冷やし、瓶をゆっくり傾けて澱をなじませてから注ぐと、米の甘みと酸味を一緒に味わえます。杉の香りのある酒なら、燻製や炭火で焼いた料理と合わせてみるのもよいでしょう。

参考・出典

本記事は上記の公開情報をもとに The Sake Wire 編集部が要約・執筆したものです。画像は自社素材を使用しています。

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