The Sake Wire

人口40人の島のビール醸造所、始まりは「おかえり」

岡山県沖の人口約40人の島・六島で、大阪出身の元営業マンが2019年にクラフトビール醸造所を開き、島の暮らしを支え続けている。

クラフトビール(イメージ)
クラフトビール(イメージ) — 写真: cottonbro studio(Pexels)

岡山県は日本の本州西部にあり、瀬戸内海に面している。県南西部の笠岡市の沖には笠岡諸島が連なり、その最も南にあるのが六島(むしま)だ。県内で最も古い灯台で知られるこの島の人口は、約40人しかいない。港では、ペンキで手書きされた「おかえり」(日本語で「お帰りなさい」を意味する出迎えの言葉)の看板が船を降りた人を迎える。2019年、この島にクラフトビール醸造所「六島浜醸造所」ができた。創業したのは大阪出身の井関竜平さん(42)。人口が減っていく地域社会を追う毎日新聞の連載が、井関さんのこれまでの歩みを取り上げた。

一杯の発泡酒が進路を変えた

瀬戸内海に浮かぶ小島の静かな港(イメージ)
瀬戸内海に浮かぶ小島の静かな港(イメージ) — 写真: Victor Puente(Pexels)

井関さんは大阪で生まれ育った。大学を出て食品卸会社の営業職に就いたが、売上の数字に追われる毎日に「この仕事を一生続けていいのか」と迷うようになる。24歳のとき、母親から、六島の祭りで神輿(みこし。神をまつった輿で、祭りで大勢の人が担いで練り歩く)の担ぎ手が足りないらしいと聞いた。六島には曽祖父の家があり、子どもの頃は毎年、墓参りのために大阪から日帰りで訪れていた。ゆったりとした時間が流れる、居心地のいい場所だった。

久しぶりに島へ渡ってみると、祭りは翌日なのに、港にはほとんど人がいなかった。海辺を歩いていると、ドラム缶でたき火をしている島民たちに声をかけられた。島で生まれた祖母の孫だと名乗ると、「おかえり」と言って冷えた発泡酒を渡してくれた。発泡酒とは、麦芽の割合を低く抑えたビールに似たお酒のことだ。この一杯が心に深く残り、井関さんは、人の温かさがある島と、厳しい競争が待つ都会のどちらを選ぶべきかを考え始めた。

協力隊から醸造家へ

小さな醸造所の仕込み設備(イメージ)
小さな醸造所の仕込み設備(イメージ) — 写真: cottonbro studio(Pexels)

約10年前、井関さんは地域おこし協力隊の隊員として六島に来て、そのまま移り住んだ。地域おこし協力隊は、都市に住む人が人口の少ない地域に一定期間暮らし、地域のための活動をする日本の国の制度だ。移住後の2019年に醸造所を立ち上げ、今も島を元気にするための活動を続けている。それでも井関さん自身は、島の外から来た人間だという遠慮があり、まだ島の人たちに受け入れられていないと感じているという。「ずっと『インベーダー(侵入者)』だと思っているんです」と話す。

米国のクラフトビール業界団体ブルワーズ・アソシエーションは、クラフトビールの造り手を「小規模で独立している」と定義している。さらに、関連する考え方として「地域社会と結びついている」ことも挙げている。人口40人の島でビールを造り続ける井関さんの取り組みは、この考え方をとても小さな地域で実践しているといえる。

ヨーロッパで味わうときの視点

小さな醸造所のクラフトビールがグラスに注がれている様子
小さな醸造所のクラフトビールがグラスに注がれている様子 — 写真: Evgeniy Alekseyev(Pexels)

六島浜醸造所のビールがヨーロッパで買えるかどうかは、今回の報道からはわからない。それでも、日本のクラフトビールを選ぶときに使える視点はある。ラベルで醸造所の名前と所在地を確かめ、どんな土地で、どんな経緯で造られたビールなのかを調べてから飲むと、同じ一杯でも印象が変わるかもしれない。日本の小さな醸造所の多くは、日本酒の蔵と同じように、その土地の暮らしと深く結びついている。瀬戸内海の島で生まれたビールに思いをはせながら、魚介の料理と合わせてみるのもいいだろう。

参考・出典

本記事は上記の公開情報をもとに The Sake Wire 編集部が要約・執筆したものです。画像は自社素材を使用しています。

秋田の酒を EU で試す — €6 から

180ml のお試しサイズと、日本酒・ワイン・ビール・ジンのフルボトル。アムステルダムから EU 域内へ発送。

ショップへ →