創業133年の酒蔵、旧会社清算でも「磯乃澤」は存続
福岡県の老舗酒造会社の旧法人が特別清算に入ったが、酒造りは2021年に新会社へ引き継がれ、銘柄「磯乃澤」は今も造られている。
九州北部の福岡県うきは市で清酒と焼酎を造ってきた老舗の旧法人「高木商店」(旧社名「いそのさわ」)が、2026年8月24日、福岡地方裁判所久留米支部から特別清算の開始決定を受けました。特別清算とは、すでに解散した株式会社が裁判所の監督のもとで資産と負債を整理する手続きです。「倒産」という言葉が見出しに並びましたが、酒蔵そのものは消えていません。酒造事業は2021年に別会社へ移っており、現在の「いそのさわ」は今回の清算とは関係なく営業を続けています。
29億円から11億円へ、縮小する国内市場

東京商工リサーチ福岡支社によると、同社は1893年創業で、1948年に法人化されました。清酒「磯乃澤」や「駿」、焼酎などを手がけ、大手や地元の有力な食品卸に販路を築いていました。売上高は2001年6月期の約29億円がピークでした。その後は人口減少や生活スタイルの変化で減収が続き、2019年6月期には約11億円まで落ち込みました。日本酒の需要低迷に新型コロナウイルスの流行が重なり、経営はさらに苦しくなったとされています。
事業を切り離して酒蔵を残す
同社が選んだのは、第三者への事業譲渡による再生でした。2020年12月に「浮羽商店」という名前で新会社が設立され、2021年6月1日に社名を「いそのさわ」に変更して酒造事業を引き継ぎました。新会社は事業目的に、酒類・食品の製造販売に加えて飲食店や宿泊施設の経営も加えています。旧法人は同じ日に「高木商店」へ社名を変え、事実上の休業状態に入りました。2026年4月30日に株主総会で解散を決め、今回の特別清算に至りました。負債総額は、報道の時点では調査中とされていました。
「倒産」の見出しの裏側を読む
日本の地方の酒蔵では、負債を抱えた旧会社と、ブランドや設備を引き継ぐ新会社を分ける再編がたびたび行われます。今回もその形で、ニュースの見出しだけでは「蔵がなくなった」と受け取られかねません。実際には、銘柄と造りの場は新しい経営のもとで続いています。
ヨーロッパで日本酒を選ぶときも、こうした再編の背景を知っておくと誤解を避けやすくなります。ボトルの裏ラベルに書かれた製造者名と所在地を見れば、今どの会社がその酒を造っているかがわかります。九州は焼酎の産地として知られていますが、「磯乃澤」のように清酒も造ってきた蔵があります。この蔵の名前を見かけたら、地方の酒蔵が生き残るために選んだ道に思いをはせてみてください。
参考・出典
本記事は上記の公開情報をもとに The Sake Wire 編集部が要約・執筆したものです。画像は自社素材を使用しています。
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